16
「こらッ!」
声がしたと同時に、目の前から人の気が消えた。
「は?」
不機嫌な蒼の声が聞こえ、強く閉じていた目を開いた。
『何で……?』
驚いている私を無視し、まるでいないかのように話が進んでいく。
「もぉやめろよ。」
「ってか、お前何でこんなとこにいんだよ?」
胸倉を掴まれて睨まれているから、蒼もキレ気味だし。
「んなの、今関係ないじゃん。
谷口サン、嫌がってるだろ?」
チラリと目が合って、自分が置かれていた状況を思い出す。
今の、見られてたんだよね…
再び頬が熱くなったのがわかる。
『あ、あたし、帰るからっ!
今日はありがとうッ。』
閉まりかけたドアの間を抜け、改札まで全力疾走した。
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◇back*
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