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それっきり、会話がない。
『怒って…る?』
そろそろと口を開くと、今日初めて私の目を見てくれた。
大きく目を見開いて、驚いているように。
「あのなぁ…」
その後、深いため息。
「危なかったんだぞ?
俺がいなかったら、どぉなってたかわかってんの?
あんなとこ連れられて、ただじゃ済まなかったぞ?」
っ!!
『ごめんなさい…』
蒼に言われて、さっきの男たちのことを鮮明に思い出す。
視線を落とせば、強く捕まれていた腕は赤く、痣のようになっていた。
本当だよね。
蒼が助けてくれていなかったら…
それを考えれば、今頃になって体中が震えだす。
赤い腕がじわじわと歪み始め、暖かいものが腕を伝って行くのが感じられた。
「蜜香。」
優しく呼ぶ声でさえ、今は私をどぉすることもできない。
「蜜香。」
先ほどと同じ声が、今度はずっと近くで聞こえた。
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