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エレベーターは、偶然なのか誰も乗ってこなかった。
その間、抱きしめられた腕は緩まず、どちらとも一言も発しなかった。
エレベーターが最上階に着くと、手を繋がれ、フロアをゆっくりと歩く。
まるで、私の歩調に合わせてくれているように。
大きくて暖かい手が、私を落ち着かせてくれる。
『蒼…』
ここの階は、レストランやカフェしかない。
その中の1つのレストランに入り、窓際の席に座らされる。
植木により、他からは見えない隅の席。
向かい合わせる人の顔を見るも、さっきからこちらを見てくれる様子はなく、目を合わせてくれない。
メニューに目を落とし、何ページか捲った後、パタンと閉じて言った。
「決まった?」
『えっ?
待って!』
急いでメニューに目を通すと、タイミング良く定員さんが注文をとりにきた。
「蜜香は?」
『あ、これ…』
「ランチCとAで。」
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