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モテ男と地味女が一緒に歩いているもんだから、嫌でも注目を浴びる。
『ね、離してってば。』
小声で蒼に言っても、無言で腕を引っ張るだけで、足を止めてくれない。
『皆見てるよ?』
こんなの、私が耐えられないよ…
蒼が連れて来たのは、人気のない非常階段だった。
ドアを閉めて廊下から完全に遮断すると、ドアに押し付けられた。
『ね、痛いよ…』
掴まれた両腕から、蒼は男の子なんだって認識させられる。
上を向いて蒼の顔を確認すれば、怒っているような怖い表情。
『教室、戻んなきゃ。
皆見てたし…』
変な噂たてられたくないでしょ?
話しかけても何も言ってくれないし、腕を掴む力は強くなるばかり。
下を向いて、蒼の反応を待った。
「何で"夏樹クン"なの?」
は?
『夏樹クンは"夏樹クン"でしょ?』
「何で"戸塚クン"なの?」
それは…
『皆見てたから…』
「別に、ぃぃじゃん。」
皆に見られることが?
『良くないよ…
困るでしょ?』
「俺は困んない。」
俺はって…
「俺は、本気だよ?」
それだけ言うと、手を離し、教室へと戻っていった。
本気って何が?
蒼は…何が言いたかったの?
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