1
『ひ〜か〜り〜!
勝手に置いてかないでよね!!』
教室に着くなり、席でプリントと睨めっこしている光に文句を言う。
光のせいで、放課後まで蒼と一緒いなきゃいけなくなったんだから!
そこは口に出しては言えないけど…
「ごめん〜
だから、プリント見せて?」
可愛くお願いする様子は、全く悪いと思っていないみたい。
はぁー
渋々プリントを渡すと、"ありがとう"といつものスマイル。
可愛いんだから…
これに弱いんだよね。
「谷口サン。」
肩を叩いて私の名前を呼ぶのは、前の席の滝沢夏樹(タキザワ ナツキ)クン。
静かで、蒼みたいにはしゃぐタイプじゃない、大人っぽい雰囲気の人。
「山岡が教材取りに来いって。
今日、俺ら日直だから。」
忘れてた!
『ごめっ!
今行く。』
先を歩く夏樹クンを追いかけ、国語準備室へ急ぐ。
山岡絵里子(ヤマオカ エリコ)、うちのクラスの国語の担当教師。
今年23か24になるらしいけど、身長と童顔から高校生って言われてもおかしくないんじゃないかな?
教師なりたてってこともあり、この先生の授業は皆の睡眠時間に変わる。
クラスの半数以上が机に伏せて眠りこける。
もちろん、1番前に座っている光も例外ではない。
ここまであからさまじゃ可哀想じゃん。
変に生真面目な私は、ちゃんと授業の内容をノートにとる。
だからこそ、不思議なことがある。
前の席の夏樹クン。
数学や英語では豪快に寝ているんだけど(それでも問題当てられると簡単に答えられている)、国語だけは真面目にノートとってるんだよね。
国語の時間だけは、夏樹クンの大きな背中のせいで黒板が見にくい。
国語は苦手なのかな?
そぉ思い、深くは考えないことにした。
.
◇next#
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!