10
「あ、蜜香、探してたんだよ?
携帯出ないし。
帰ろう?」
後ろから聞き慣れた声がして、クイッと腕を掴まれた。
『いやっ!
……あ…
ごめんなさい…』
私…
気付けば、触れられた腕を振り払っていた。
恐る恐る振り返ったけれど、俯いたままで蒼の表情は伺えない。
廊下の冷めた空気とは違い、教室内には圭吾クンの楽しそうな笑い声が聞こえる。
聞かなければ良かった。
呑気な圭吾クンの笑い声さえも、腹立たしくてしょうがない。
何も言ってこないのは、私のこと、"遊び"だったから?
"本気なんだ"って言ってくれたのも、嘘なんでしょ?
『帰るね…』
そぉ言って蒼に背を向けても、引き留めたり声を掛けてさえもくれなかった。
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