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化粧が取れるのも気にせずにボロボロと泣き崩れてしまった舞サンに、しばらくは誰も何も言えなかった。


聡美サンは驚いたように目を見開いて、蒼は冷めたように目を細めて、舞サンを見下ろしている。



舞サンは本気で蒼が好きなんだ。



でも、だからって…




『蒼はモノじゃないよ。』


優しく言うつもりだったけど、口から出てきた声は思いの外乾いていた。



「「は?」」



舞サンと聡美サンが同時に私を見た。


繋いだ手を離さないまま蒼よりも一歩前に出て、話を続けた。


『"返して"って、蒼はモノじゃない。

蒼の意志を無視して、"取るな"とか"返せ"とか、酷すぎるよ。


蒼の気持ちも考えてみてよ?!』



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