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心を失くした天使2
告白
ある日、いつものように放課後に晃司のアパートへ立ち寄った。
「!?」
晃司が部屋の入り口の前で膝を付いて苦しんでいた。
「どうしたの!?」
僕を見上げた晃司の顔はひどく痛めつけられたものだった。唇の端がドス黒く変色し血を滲ませてる。
「たいした事ないよ…」
力なく立ち上がり、鍵を開けてどうにか中に入った。肩を貸さなきゃいけない程ではなさそうだけど、それでもかなり苦しそうだった。
ベッドに腰掛けた晃司は、手鏡で傷口を見て溜め息をつく。例の兄貴が関係してるのは言われなくてもすぐわかる。
「間が悪かったんだ。用があって家に戻ったら、たまたま兄貴に出くわしてさ」
「…何で殴られたの?」
「金よこせって親とバトル中だったんだ。逃げ帰ろうかと思ったけど…母親が殴られてたから止めに入ったらこれさ」
働いてるくせにまだ親からお金を取るなんて…どれだけクズなんだ。
「痛っ…!」
上着を脱ごうとした晃司が小さく呻く。
ゆっくり脱ぎシャツを捲ると、脇と背中の間あたりが大きな痣になっていた。
「酷い…」
「膝蹴りがまともに入ったんだ」
「待ってて」
僕は浴室からタオルを借り、濡らしてからそこにそっと当てた。
「冷やした方がいいんだよね?」
「多分…」
しばらくそのまま沈黙が続いた。
「あの時も…」
「…?」
「こんな風に和也を介抱したんだ…」
「…」
「酷い怪我で、歯が折れてあばらにヒビが入って、お尻が裂けて…」
「…」
「それなのに和也は、俺を守れなくてごめんって…」
あの日の和也の顔や声が鮮明に蘇る。
「乱暴された事を知られたくないから病院に行きたくないって言ったけど、でも死んじゃいそうで怖かったから説得して…人を呼びに行こうとした俺に言ったんだ」
「…何て?」
「置いてかないで、一人にしないでって…泣きじゃくりながら言った」
「…」
晃司を責めるつもりで言ったわけじゃない。怪我の程度はどうあれ、今の晃司はあの時の和也と同じだから。
「陸斗」
「…ん?」
「俺は…警察に行くよ。まだ間に合う。まだ裁ける」
「…だめ」
「きっと何処かで和也くんにもわかるはずだよ。あいつら捕まったって。それで少しでも気が晴れるなら…」
「違う」
「?」
「…晃司も捕まるなんて…嫌だ」
「あれだけの事をした側にいたんだ。俺なんかどうでもいい。然るべき罰を受けて…一からやり直す」
「…一緒にいたいって思う人がまたいなくなるのはもう嫌だ」
「…陸斗」
「和也に大怪我させた晃司の兄貴と、友達のやつは絶対許せない。でも俺は…俺も許せない」
「陸斗は何も悪くないよ。あの状況で兄貴に歯向かったら、和也くんより酷い目に遭ってたと思う」
「そうじゃなくて…」
「…?」
「和也が痛がって苦しんで気絶してた時、同じ事をされてた俺は…少しだけ痛かったけど…」
この告白は和也への懺悔になるだろうか?そんなわけない。自分が変態だと打ち明けるだけだ。やめるなら今しかないのに、僕は言ってしまった。
「気持ちいいって思ってた…」
「陸斗…」
晃司は僕を抱きしめてくれた。
「自分を責めないで。陸斗は悪くない」
「…」
晃司は今までで一番やさしい顔をしていた。
「ありがとう、もういいよ。だいぶ楽になった」
自分から打ち明けておきながら早くも後悔していた。これは『またセックスしたいと思ってる』とも取れるし、何より『一緒にいたい』だなんてまるっきり愛の告白だ。
しかも晃司が『陸斗は悪くない』って言った後の短い間で、キスされるかも…なんて勘違いまでしてしまった。
でも晃司はシャツを元に戻しただけだった。それは何気ない動作でしかないのに、必要以上に素っ気なく見えた。怒ったかも、気を悪くしたかも、そう不安になる。
「初めて本心を話してくれたね」
驚く程にやさしい口調だった。
「俺も陸斗と一緒にいたい。本音を言えばもちろん警察にだって行きたくない。だから…そう言ってくれてすごく嬉しいよ。本当に嬉しい」
「和也の事を考えたら…絶対そんなのダメだって思うのに…俺…どんどん晃司を好きになってく」
結局、晃司のやさしさに甘えてストレートに告白してしまった。露骨に突き放されたり嫌がられたりしないとわかってて言うなんて卑怯にも程がある告白だ。
心のどこかで期待していた通り、晃司はまた抱きしめてくれた。
「俺もね、陸斗に入れた時、正直気持ちよかったよ。小学生の男の子にこんな事しちゃいけないって思いながらやめられなかった」
「…」
「俺も陸斗が好きだ」
どこまでが本心か僕にはまだわからない。僕に気を遣い、傷つかないよう話を合わせてるだけかも知れない。それでもやっぱり嬉しかった。
「あれが初めてだったし、実は入れてすぐ一回イッちゃったんだ」
そう言えばお尻の中で熱いものを感じた気がする。
「でももっとしたくてやめられなくてさ」
晃司は少し照れ臭そうに笑った。そしてすぐ真顔になると
「…またしたいって思ってる?」
と聞いてきた。すごく答えにくい。『したい』と即答してエッチな変態だと思われるのは恥ずかしい。かと言って『別に』ってスカした態度を取るにはもう遅い。ちんこが硬くなって制服のズボンを膨らませてしまってるから。
「晃司は?」
「陸斗がしたいなら」
「…したい…かも」
そして晃司は僕の頬に手を添えてキスしてきた。僕は和也への裏切りとも取れる罪悪感を感じながらも、一切の抵抗もなくその唇を受け入れた。

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