[携帯モード] [URL送信]

心を失くした天使2
初恋
晃司が嫌な顔ひとつしない事に甘え、僕は毎日のようにアパートに立ち寄った。
もちろん留守の時は仕方なく家に帰るけど、もはや自分の部屋にいるよりも、話し相手がいる晃司の所にいる方を望んでいた。
「陸ちゃん、毎日遅くまでどこに行ってるの?」
お母さんが心配するのも無理はない。
「ん…図書館とか」
「こんなに遅くまで?」
毎日帰りが夜9時ともなれば、それが嘘である事など両親もわかってるはずだ。
前より薄暗くさえ感じる台所ですっかり冷めた晩ご飯を温めもせず、ただ黙々と食べてる間も、お父さんは黙ってリビングのソファーに座り背を向けていた。
「ごちそうさま」
それは作ってくれたお母さんや、家族を養う為に働くお父さんへの感謝の言葉ではない。『もう話したくないから自分の部屋に行く』を意味するだけのキーワードでしかなかった。
「陸ちゃん…!」
お母さんが不意に呼び止めた。
「…何?」
階段で一応、足を止める。
「少し…話そ?」
「…いい」
話したい事は晃司に話してる。両親と話す事なんか何もなかった。僕は再び階段を上がり、自分の部屋に篭った。
「…」
いつものつまらなく無意味な一日が終わろうとしてる。宿題をしてお風呂に入ったら後は寝るだけだ。来なくてもいい同じ明日を迎える為に。

精通したあの日から、僕は毎日のようにオナニーをした。
森の中でセックスした事を思い返すだけでちんこは堅くなり、体が熱くなる。
晃司の堅いものがお尻に入り、一定の痛みを通過したら感覚が全然変わった。
出たり入ったりするたびに鈍い痛みとともにそれまで感じた事のない気持ちよさが下半身を支配していた。
晃司の兄貴に『感じてんのかよ!?』とバカにされた時もそうだった。恐怖に慄くシチュエーションで、他人に触られるのがくすぐったいようなムズ痒いような感覚になり、無意識とはいえ勃起してしまった。
…僕はきっと変態なんだろうな。それを思い返して興奮してしまうんだから。
射精が終わると和也に対する罪悪感に苛まれ、もう二度とするまいと誓いながらまた次の日には同じ事を繰り返してる。
親友を失った悲劇の主人公を気取りたいだけの変態だ。

「…」
今夜もまた寝つきが悪い。頭も体力もろくに使わないから、体が睡眠を欲していないのがわかる。
…和也は今どこで何をしてるだろう?もはや想像すら出来ない。窓から見えるあの月を別の場所から見てるだろうか?陸斗は今何をしてるだろうと思ってるだろうか?
…和也がいたら、いなくなったりしなければ、もう少しだけマシな生活を送ってる気がする。少なくとも晃司の存在を求めたりはしてないはずだ。
僕は、いなくなった和也にいつかまた会えると信じる気持ちより、明日は晃司に会えるだろうかという気持ちの方が強い事を自覚しながら眠りについた。

晃司は大学受験を前に勉強に忙しい時期に入っていた。それでも僕が部屋を訪れると、やさしく笑って迎え入れてくれる。
まだ高校生なのに一人暮らしを許されてるのは、例の兄貴から離れて勉強に集中する為なのに、僕が邪魔をしてしまってるんじゃないだろうか?
「一人だと逆に静かすぎて落ち着かないんだよ。陸斗が側にいるくらいが丁度いい」
晃司の勉強に合わせて僕も宿題をしたり、わからない所は教えてもらったりもした。
「腹減ったしピザでもとろうか?」
晩ご飯はそんな感じで済ませてる。いつもは家に帰ってから食べると遠慮してたけど、その日は初めて一緒に食べた。
何も言わなくてもやさしく迎えてくれる。何かを話すと真剣に聞いてくれる。
和也がいない今、僕の一番の理解者と言ってもいい。そんな晃司に僕は恋をしていた。

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!