[携帯モード] [URL送信]

心を失くした天使2
修復不可能
射精しても何ひとつスッキリしない沈んだ気分のまま、僕はお風呂から上がって自分の部屋に戻った。
ドアを開けると和也はさっきと同じようにベッドに腰掛けていた。僕の古いパジャマを着てる。
「これ、置いてあったから借りたよ」
「うん…」
あまりにも重い雰囲気だった。
「説明しろよ。『コウジ』って、あの時陸斗に乱暴したやつだろ?射精しそうな時にどうしてそいつの名前が出るんだよ?」
「…晃司は…兄貴に逆らえなくてあの場にいただけで、乱暴するフリをしていただけなんだ…」
「え…?」
「悪い人じゃないんだよ…」
「それじゃあ…レイプされたのは俺だけだったのか…?」
「…ううん」
和也が少しでも理解してくれるよう願いつつ、僕はありのままを話した。
「和也だけ酷い目に遭わせたくなくて…自分から同じ事してって言った…」
「…」
同情と言えたかも知れない。でも恩を着せるような事はしたくなかったから、それ以上は言わなかった。
「何でそんな事したんだよ。陸斗だけは無事に済んだかも知れないのに」
「…和也ひとりが酷い目に遭うのが嫌だった…」
「何だそれ、同情かよ」
「そうかも知れないけど…友達だからじゃないか!それなのに…何も言わずにいなくなって、どれだけ心配して捜したかわかってんのかよ!」
「…それは悪かったよ。一度離れちゃったらもう連絡しにくくなってさ」
和也だってこんな事で言い争う為に戻って来たわけじゃない。それはわかってるけど…やっぱり…もうダメなのかも知れない…。前みたいに仲良しの親友に戻るのは…。
「熱くなるのはいいけど…肝心な所、答えないつもりか?」
「…」
「晃司ってやつとどういう関係なんだよ?いい人だから普通に友達でした、なんてわけないよな?」
さっきの異常な強要といい、親友の関係を修復出来ない予感といい…もうどう思われても構わないつもりですべてを話した。
晃司との再会、そのやさしさに心が安らいだ事、そして体をも晃司のものにした事も…。
和也は黙って聞いていたけど、話し終えて一瞬の間を挟んでから突然僕の胸ぐらを掴んだ。
「ふざけんなよ!さっきどんなに心配したかって言ったよな!?心配しながら男とデキてたってか!?冗談じゃねぇよ!」
怒るのも無理はない。でもそもそもは和也が何の連絡もして来なかったのが悪いんだ。
「なら連絡してくれればよかったじゃないか!和也がどこでどう過ごしてるかわかってたらこんな風にはならなかった!」
「…」
和也は手を離した。
「…違うね」
「?」
「連絡してたってお前はきっといつか男とそうなってたさ」
そんなはずはない。僕は『男』が好きなんじゃない。『晃司』が好きなんだ。
でも…何も言い返せなかった。
「どうしたの?大きな声出して」
お母さんが突然部屋のドアを開けた。
「ごめん、ゲームしてたら熱くなっちゃった」
和也は瞬時に笑顔で答える。僕も振り向いた時には作り笑いを完成させ、心配させないよう嘘をついた。
「和也がズルばっかするから」
「…そう」
お母さんは少し不思議そうな顔をして頷く。そりゃそうだ。ゲームしてたと言ったのに、テレビの電源さえついてないんだから。
「お隣に聞こえない程度にね」
「うん」
ドアが閉められると同時に二人の顔から笑みが消える。
「お互いに嘘つくのうまくなったよな…」
「うん…」
「…やっぱり俺にはわかんねーよ」
和也じゃなくても同じ事を言うだろう。
「言い訳に聞こえるだろうけど…俺だって悩んだんだ…。こんな事しちゃいけないって。でも…頼れる人も、話せる人も他にいなくて…いつの間にか…晃司しか見えなくなってた…」
「これからもずっとその関係続けんのか?」
「…ううん。両親と仲直りして、もう会わないでおこうって話した」
「…」
普通に考えたって中学生が男と愛し合ってるなんて事を告白したら誰もが驚くだろう。嫌悪感を抱かれても仕方ない。
「…いくら陸斗でも…全然わかんねーし気持ち悪ぃ」
そう思われる事が僕の受け入れるべき罰ならそれでいい。和也を怒らせただけじゃなく、傷つけてしまった気がしたから…。
「でも…ヘタに嘘つかれるよりはマシか」
そういう所は相変わらず和也らしい。だけど、そうは言っても和也が僕に嘘をついてる。何かを隠してる眼差しはここに来てから変わってない。
「…もうやめよう。陸斗とケンカする意味なんかない」
僕も同じ意見だ。
「もう寝るよ。布団借りていいか?」
「うん…。取ってくる」
僕はお客さん用の布団一式を仏間から部屋に運んだ。
寝るにはまだ少し早い気がするけど、和也は布団に入りすぐに静かな寝息を立てた。
部屋の電気を消し、僕もしばらくベッドの中であれこれ考えたりしてたけど、すぐにスタンドの灯りを消して眠った。

「…」
眠ったとは言っても本当に眠りについたわけじゃない。暗闇の中、目だけは冴えて頭がフル稼働してる。考えるのはもちろん和也の事だった。
あんなに会いたいと切望した和也なのに…今は会うべきじゃなかったと後悔してる僕がいる。
オナニーなんて強要され恥ずかしい思いをした。自分の意思で告白したとはいえ、晃司の事で気まずくなり『気持ち悪ぃ』とまで言われた。
この状況でまた友達に戻るなんて…無理だと思う。やっぱり僕には和也が昔の和也とは別人のような気がしてならない。この先、またお互いに嫌な思いをするくらいなら、楽しかった想い出だけを大切にしてもう会わない方がいい。殺人事件の事とか色々腑に落ちない点もあるけど、ともかく元気なのがわかって安心したのは事実だし。
そう決心した時、晃司と会わないと決めた時よりも寂しくない事に気付いた。やっぱり僕は晃司を愛してるんだ。…会いたいな…晃司に。
そうだ、明日報告に行こう。和也が会いに来た事を。それなら晃司に会う理由になる。和也もそう遅くまではいないだろうし、その後少し会うだけなら…。そう考えて眠りについた…。

僕に触れる晃司の手はいつもやさしかった。手だけじゃない。抱き締める腕も、キスする唇も全部だ。
僕は晃司に愛される夢を見ていた。仰向けに眠る僕を裸にして、脚を開き太ももをやさしく撫でる。それだけで僕は感じてしまい、ちんこを堅くしてしまう。
焦らすようにそのちんこに軽く触れるもんだから、僕は気持ちよくして欲しくて晃司の手を自分からちんこへと持っていく。早くいじって…。いつものように強く握って…。激しくシゴいて…。
生暖かい息が股間に当たる。それが夢ではなく現実だと気付くまで、かなり長い間まどろみに揺れていた…。

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!