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心を失くした天使2
無邪気な要求
まるで正月と誕生日とクリスマスがいっぺんに来たような晩ご飯だった。
お父さんにとって、和也は『息子の代わりに大怪我をした恩人』だし、男に強姦された過去など気にする事もなく、丁寧に頭を下げてお礼を言っていた。
「後遺症もなくて本当によかった。もし陸斗が殴られていたらどうなってたかわからないしね。本当にありがとう」
「おじさん、もういいよ。恥ずかしくなってきた」
和也は照れて顔を少し赤くしてる。
「さ、いっぱい食べて。はりきっていっぱい作るからね」
お母さんはせっせと料理を作り、テーブルに運ぶ。
「う〜わ、うまそ〜!いっただきま〜すっ」
…両親もいるこの場ではまるで昔の和也だ。おかしな雰囲気は微塵もない。
殺人と再会が同じタイミングだったから考えすぎたのかな…?

晩ご飯の後、しばらくみんなでお茶を飲みながら話していた。そこでようやく和也がこれまでどうしていたのかが話された。
引っ越したと言っても、やはり現実から逃れる引っ越しであって、住む場所も決まってなかったそうだ。とりあえず、という形でお世話になったのがお父さんのお兄さんの家で、東京の大学に進学したいとこの部屋を使わせてもらってるらしい。
そして…叔父さん夫婦だけの家に居候を始めてすぐにお母さんが死んだ。和也はそれさえも『過去の出来事』として気にしていないようだ。
「偉いな。お母さんの事も大変だったろうに」
お父さんの言葉に和也が答える。
「俺、強くなりたいから」
和也の持ち味とも言える、意志の強い眼差しでハッキリ言った。
「鍛えてるし、もう誰にも負けない」
「…」
あんな事があったのだからそう願うのは当然、とばかりに両親はただ黙って頷いていた。僕にはその言葉が『誰でも殺せる』と言ってるように思えたけど。
「大人になったら父さんみたいな船乗りになりたいし、もっと体鍛えておかなきゃ」
でも僕にはそれが空手を始めた理由とは思えない。しかも船乗りにって…。将来の夢なんてコロコロ変わってもおかしくないかも知れない。でも和也は、一度決めた事を試しもしないで諦めるタイプじゃない。警察官になりたい夢を変えたのはなぜだろう。
…和也は何か隠してる。僕にも言えない重大な『何か』をだ。住む場所は違っても、これからまた友達として付き合っていけるはずなのに…そんな気になれないのは、その『何か』がとても恐ろしい事だからだ。

「久し振りに男同士2人で風呂入ってこい」
お母さんと後片付けしながらお父さんが言った。
小学生の頃、たまに泊まりに来た和也と一緒にお風呂に入ったっけ。あれは…3年生の頃だったかな。お父さんも交えて3人で狭い浴槽にぎゅうぎゅう詰めになりながら浸かった楽しい想い出…。
「よし陸斗っ、背中流しっこしようぜっ」
その時と同じセリフを言う和也。一瞬、幼かった頃の顔が浮かぶ。
…神様…。どうか僕のこの嫌な予感がただの思い過ごしでありますように…。

「筋肉ついたろ?」
脱衣所でシャツを脱いだ和也は確かに引き締まった体をしていた。背も僕より高く力こぶもすごい。
きれいな体であの事件の時に付いたと思われる傷跡はないみたいだった。
「ホントに久し振りだよな、陸斗と風呂入るの」
サッとハーパンとトランクスを脱ぐ和也。見るつもりじゃなかったけど、視界に入った『それ』に一瞬『えっ?』と思った。
何て言うか…その…いや、ハッキリ言うと『小さい』んだ。ちんこの上辺りにホヤホヤと毛は生えてる。でもちんこそのものは小学生の頃と何も変わってないみたいな気がした。成長した体と明らかにアンバランスだ。
「…小さいだろ?」
僕の視線を感じ和也は自ら言った。
「いや、そんな事…」
「いいんだ。ホントの事さ」
何か理由があるのだろうか?
「陸斗も脱げよ。俺のだけ見るなんてダメだぞ」
そう言われて僕も裸になった。
「陸斗は…大丈夫なんだな」
「何が?」
「ちゃんとおっきいじゃん」
僕は特別に大きいわけじゃない。毛も最近生えてきたばかりだし…でも和也のと比べたら倍ほど大きい。
「オナニーとかしてんだろ?」
和也の口からそんな言葉が出るとは思わなかった。
「う、うん…まぁね」
「勃つともっとデカくなるだろ?」
「そりゃ…そうだよ」
ずっと一緒だったならこんな下ネタも普通に話せたんだろう。でも親友だったとはいえ、久し振りに会った相手にはあまりにも答えにくい。
「俺…勃たないんだ」
「え?」
「何をしても、どんな事をしても…エロ本見たって勃たないんだよ」
「…」
「だからオナニーってのもした事なくてさ」
それは…あの時に受けた精神的な苦痛の後遺症…?
「バイアグラとかいうやつは試してないけどな」
和也は小さく笑って浴室に入って行った。
医学的、科学的にはどうか知らない。でもちんこの成長具合の要因に間違いなくオナニーが含まれてると思う。手でシゴくという行為はある意味鍛えてるようなもんだろうし。それを一度もした事がないから大きくなりようがないんだ。
…まさかそんな形で後遺症が残っていたなんて…。もしずっとそのままなら、きっと大人になって結婚とかしても女の人とセックス出来ないだろう。いや、それが原因で結婚すら出来ないんじゃ…。
…晃司と毎日のように快楽に溺れてた自分があまりにも汚く思え自己嫌悪に陥った。

トボトボと浴室に入ると、和也は体を流し終え浴槽に浸かってた。だから僕は洗い場で体を洗う事にした。
あんな事を聞いてしまったら何を話していいのかなんてわからない。シャワーを頭から浴び、まずは髪を洗った。
シャンプーの泡を流してる時、和也がふいに言った。
「なぁ、勃起したとこ見せてよ」
「えっ?」
目を開けられない状況で、和也はいきなり僕のちんこに触れてきた。
「ちょっ、和也っ…!?」
「いいだろ?友達じゃん」
『友達』という言葉をやけに軽く扱ってる気がした。
「触ると勃起するよな?」
「しっ、しないよっ…!」
泡を流しきり和也を見ると、その顔はイタズラっ子の笑みを含んでいた。…違う…そんな生易しいもんじゃない。この顔は…あの時に見た晃司の兄貴と同じだ。ニヤニヤして、人に恥ずかしい思いをさせる事を楽しんでる…。そういう顔だった。
「やめろって…!」
和也の手首を掴み股間から離そうとしても、すごい力でその場に固定されビクともしなかった。
「見せてくれたっていいだろ?俺、自分ので見れないんだよ」
だからって僕のを勃起させようなんて。
「そうだ、射精するとこも見せてよ。いいだろ?俺、精液って朝起きたら勝手に出ちゃってんだよ。オナニーで出るとこ見せて」
頼み込んでるように聞こえるけど、その目と力は明らかに拒否を許さない強さを持っていた…。

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あきゅろす。
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