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心を失くした天使2
安息の日
はりきってスーパーに買い物に行ったお母さんのおかげで、晩ご飯はお昼とは比べ物にならないくらい豪勢だった。
『お袋の味』とかよく言うけど、僕はそれがどんなレストランで食べる物よりおいしいと思ってる。そういう意味で、本当に久しぶりにおいしい物を食べた気がした。
食事中、お父さんもお母さんも無理に会話を弾ませようとする。まだ照れ臭くて僕の口数は少ないけど、それでも一家団らんは楽しかった。
今まで信じなかった『時間が解決してくれる』という言葉…。それが少しわかったように思う。きっといつか…僕はこの団らんの中で笑っているはずだ。そんな気がしていた。

夜中、暗い部屋のベッドの中で考えていた。
「…」
晃司とはもう会わない方がいいのかな…。
晃司は、自分が(正確には兄貴が)傷つけた僕を立ち直らせる為に側にいてくれたんだ。両親との関係に光が見え、過去を忘れようと決めた僕に晃司が寄り添う義務はない。
それに晃司との関係だけは両親には話せない。あの事件の当事者でもある晃司と会い、しかも好きになってセックスまでしてたなんて普通に考えたらありえないからだ。
嘘をつくくらいなら話さない方がいい。だから殺された晃司の兄貴と佐藤って人があの事件の加害者って事も話すつもりはなかった。話せばきっと何かしらの嘘をつかなきゃいけなくなるような気がした。
とにかく明日、もう一度晃司に会いに行こう。もしかしたらさよならする事になるかも知れない。忌まわしい記憶と共に、晃司との関係にもさよならを…。
そしてこの2年間を取り戻せば僕はきっと元の僕に戻れる。ただひとつ、和也だけは戻って来ないけど…。

次の日のお昼過ぎ、僕は晃司のアパートを訪ねた。
「どうした、暗い顔して。仲直り出来なかった?」
晃司はプレゼントしたマグカップでコーヒーを飲んでる。
「ううん、出来たよ」
「そっか。…よかったな」
「…」
僕の悪い癖だ。いざという時に一番肝心な事が言えない。
「ならもう会わない方がいいね」
晃司がそう考えていたとは思えない。僕の気持ちを読み、言いにくいとわかって敢えて切り出してくれたんだ。
「俺と会う時間も、両親と過ごす方に使うべきだよ」
「うん…」
ダラダラと会ってるんじゃ意味がない。会わないと決めたなら二度と会わない方がいいと思う。でも…離れられるだろうか…。
「おいで…」
手招きされベッドに座る晃司の横に座った。
「最後に…もう一度抱いていいか?」
「…うん」
それも僕には言えなかった事だ。
セックスは単純に気持ちいい。でも普通の中学生は、少なくとも男同士でそんな事しない。だからセックスも忘れなきゃいけないんだ。すぐには無理でも、いつか女の子と恋をして、大人になったら結婚して子供を作る。そんな当たり前の人間になる為に…これを最後にしよう。
「脱いで」
僕は立ち上がって裸になった。
「よく見せて」
勃起したちんこも隠さず晃司の正面に立つ。しばらく眺めた後、僕の腰を抱いて引き寄せた。顔を下半身に密着させるようにしてちんこをくわえる。
「気持ちいい…」
もっと強く舐めて欲しい思いから晃司の頭を抱いた。
「一回出していいよ」
いつ射精してもいいように口からちんこを出して、指で摘まんでシゴき出す。時々皮を剥き、中身をペロッと舐めては透明の液をすくい取ってくれた。
間近で見られてシゴかれるのはこれまで散々見られてるにも関わらず、意外に恥ずかしいものがある。だから僕の興奮の度合いも高まっていった。
「出るっ…!」
いくら我慢しても晃司の手にかかればあっという間だ。クイッと皮を剥かれた状態にされると、皮を被ったままの時より精液が勢いよく飛ぶ。気持ちよさも少し増す気がする。僕のすべてを知ってる晃司は、敢えてその状態にしてまた口にくわえた。
「んんっ!」
喉を直撃するかも知れない勢いで射精する。今日もまたたくさん出た。晃司はそれをすべて飲み込んでから僕をベッドに寝かせた。そして自分も裸になり体を重ねる。
「俺もすぐにイキそうだよ」
僕の片足だけを持ち上げ、開いたお尻にちんこを入れてきた。先っちょはすでにヌルヌルしてる。少しだけお尻を上に向けてるけどほぼ正常位だ。顔を見ながら気持ちよくなれる僕の好きな体位。気持ちよさに喘ぐ顔を見られる恥ずかしい体位とも言えるけど。
「んっ…!んっ!」
晃司が腰を打つたびにちんこが入ってくる。最初から気持ちよさ全開だ。
「はぅぅ…」
しっかりと晃司の背中に両腕を回し、突き上げられる悦びに酔う。
「あぁ…陸斗…!」
晃司も射精を我慢してるらしい。腰の振りはゆっくりだけど、力強く突いてくる。
「イクよ…!」
ドクンッと一瞬ちんこが太くなり、熱い精液がお尻の中に放たれた。
「もっとして…」
エンジンがかかってきた。射精したばかりの晃司に、今日で最後のおねだりをする。そしたら今度は両足を持ち上げられ、さっきよりもっと速くちんこを出し入れしてきた。
「あっ…あっ…!」
太くて長くて堅くて熱いちんこが何も考えられないくらいに僕を支配する。
「陸斗…最高だよ…!」
僕も最高だ。晃司以外、誰にも見せられないような恥ずかしい格好。裸で両脚を開き、ちんこもお尻も丸見えにさせてる。でもこの恥ずかしさが気持ちよさを増幅させる。
「俺もっ…!最高っ…!だよっ…!」
普通の男の子はお尻の穴なんか気持ちよくならないのかも知れない。僕には特別な才能があるのか…それとも異常なのかそれはわからないけど、この気持ちよさがあったから晃司を憎めなかった。晃司を好きになった。離れられなくなった。
「陸斗…」
体を密着させキスしてきた。
「ホントは…離れたくないよ…」
喋りながら器用に腰を打つ。
「愛してるんだ…」
僕の顔の造りを確かめるように、眉や鼻、耳に触れてくる。
「俺は心からお前を愛してる…」
そんな風に言われたら…僕の柔らかい意思が簡単に崩れてしまう。
「俺…やっぱり晃司と離れたくない…」
両親との仲直りと、晃司との関係を『別の事』と考えたらいいのかも知れない。毎日は無理としても友達として会う感覚なら…。
「うれしいけど…もう俺は必要なくなるよ。家で両親と仲良くやって、学校の友達とも遊べばいい」
「やだ…!離れたくない…!」
もう会わないと決めたはずなのに…その決意はすっかり失われていた。
「もっと抱いて…!もっと好きって言って…!俺、何でもするから…!」
腕だけじゃなく両脚も晃司の体に巻き付けた。
「晃司がいないとダメなんだ…!」
その時は純粋に存在そのものを望んでいた。弱味も恥もすべてを晒せて、正しく導いてくれる『兄』としての晃司が必要だった。
「ごめんな、陸斗…」
「嫌だ…!絶対に嫌だ…!」
そしてその想いは、兄を望むだけじゃなく、僕の心も体も満たしてくれる唯一の存在として神格化していく。
「お願いだからっ…!」
泣きながら射精したのはその時が最初で最後だった…。

嵐のようなセックスの後、晃司の腕枕に抱かれながら横顔を見つめていた。
「…また来てもいいよ」
「…ホント?」
きっと僕はそう言ってくれるのを待ってたんだ。
「どうしても会いたくなったらまたおいで」
「明日、どうしてもって気持ちになったら?」
「少しは我慢しろよ」
鼻を摘ままれた。
「えへへ…」
「…やっぱり…笑うとかわいいな」
気負いも何もない笑顔を見せたのは初めてだった。
「子供らしくて…すごくいい」
「晃司のおかげでやっと普通に笑えるようになったみたい」
「もう…立ち直れたか…?」
「…多分」
「…」
やさしい笑顔が『よかったな』って言ってる。

この1年とちょっと、僕のわがままに付き合わされても嫌な顔ひとつしなかった晃司。今の僕には、かつての和也と同じ…もしかしたらそれ以上の存在かも知れない。
晃司がいてくれればそれだけで勇気が湧いてくる。
晃司の顔を見るだけで心が安らぐ。
…でもこれが…晃司との最後の安息だったんだね…。

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