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心を失くした天使2
新たな悪夢の始まり
「…えっ!?」
「昨夜、ひどく酔っぱらって…歩道橋から落ちて首の骨を折って死んだって…」
「…」
複雑な気分だった。人が死んだってのにクスクス笑いたい気分がこみ上げてくる。
「お通夜とか葬式とかで実家に帰るから…しばらく会えない」
「…いい気味だね」
「…」
「悪い事したからバチが当たったんだよ」
「…やめろ。それでも身内なんだ」
確かに不謹慎な事を言ったのはわかってる。でも謝る気はなかった。それどころか、自分でも信じられないくらい汚い言葉が次々と浮かんでくる。
「何で?晃司だって心の中じゃ喜んでんじゃないの?」
「やめろったら」
「やだね。ざまぁみろって叫びながら街中走って来ようか?」
「陸斗!」
晃司は手を振り上げた。叩かれる覚悟はした。でも晃司はそうしなかった。そうさ、僕に負い目がある晃司は間違っても僕をぶったり出来ない。その弱味を利用した卑怯な僕は更に調子に乗る。
「ニュースになったら和也もきっとどこかで笑い転げるよ。死にやがった、ざまぁみろってさ」
「…」
愛する人を困らせたいわけじゃないのに。嫌なやつと思われたくないのに。
晃司の兄貴の死を嘲笑いたい気持ちが僕をどんどんおかしくしていく。
「…ねぇ、セックスしようよ」
「…え?」
「しよ、今すぐ」
僕はプレゼントの小箱を下駄箱の上に置き、晃司のズボンに手を掛けた。
「陸斗…!」
パンツも下げて下半身を露出させると、僕はちんこにむしゃぶりついた。
「陸っ…!?」
あれだけ苦手だったのに、実際変な味と匂いがするのに、僕は狂ったようにしゃぶりまくった。
みるみる堅くなったちんこを慈しむように舐め回すうち、今度は晃司がおかしくなった。
「くそっ…!上がれっ!」
腕を掴まれ、ほとんど強引に引きずり込まれる。慌ててシューズを脱ぎながら上がると、晃司は部屋まで行かず廊下の真ん中で僕を壁に向け立たせた。
「えっ?」
「…」
黙ったまま後ろから僕のハーパンを脱がしにかかる。
「すぐ済ませるから…!」
パンツも足首まで落とされ、シャツを捲ってほとんど裸にしてから晃司はちんこをお尻に当ててきた。あの日以来初めての生セックスだ。
「変な気分なんだ…!すごくイライラする…!」
わからないでもなかった。僕でさえそう感じていたんだから。
立ったままで後ろから入れられるセックスなんて初めてだ。下から突き上げられるたび、和也を傷つけた悪党の死を悦ぶように大袈裟に喘いだ。
「あんっ!あんっ!いいっ…!」
正直に言うと、あの兄貴の死は僕にとって…そしておそらくは和也にとってもいい事でしかなかった。きっと他にもアイツの死を喜んでる人がいるに違いない。
このセックスは悪夢の元凶が消えた事を祝う儀式。だから僕は気持ちよさそうに喘ぐ。
「もっとして…!もっと突いて…!」
今までで一番気持ちいいセックスだった。突かれながら僕は自分でちんこをシゴき、二度も射精して廊下の壁を汚した。
「まだ出さないで…!もっと…!もっと…!」
「んんっ…!」
もちろん限界がある。お尻の中に晃司の熱い精液を受けても、僕はおねだりを続けた。
「まだ行かないで…。もっと気持ちよくしてよ…」
でも射精して我に返った晃司は静かにちんこを抜いた。
「…ごめん」
「もう一回だけ!お願い!」
「こんな…あの時みたいなセックス…もうしたくない」
あの時とは違う。僕はこんなに求めてる。
「…留守の間、部屋を使うのは構わないから」
晃司はそう言って部屋へ戻って行った。
ちくしょう…。僕をこんな格好のまま、こんな気分のまま放っておくなんて。飛ばした精液もそのままに、僕はハーパンを履いて怒って出て行った。プレゼントはそのまま、ただ力任せに思いっ切りドアを閉めて…。

…で、自分ちの部屋に戻ってからまた自己嫌悪に陥るいつものパターン。
家族が死んで普通でいられるはずがない。それがどんなにひどい兄貴だったとしても。それなのに僕はまるで楽しむようにセックスを要求した。
晃司が引いちゃうのも当然だ。出来るだけ早く謝らなきゃ…。

晃司がいつ戻って来てもいいように、僕は部屋の留守番を務めた。もちろん夕方から10時くらいまでだけど。
お葬式となると家族はきっと大変なんだろう。4日が過ぎても晃司は帰らなかった。
退屈なのを我慢してそれでも晃司の帰りを待った。
一人で過ごすのがこんなに寂しいなんて忘れてた。ベッドで横になり、かすかに香る晃司の匂いだけにすがった。
…早く会いたい…。抱きしめて欲しい…。僕はもう完全に…晃司がいないとダメになってしまった…。

丸一週間が過ぎ、僕はその日も放課後に晃司のアパートに向かった。
玄関のドアを開けた時、昨日までなかった靴があるのを見て思わず心を踊らせてしまった。
中に入ると晃司はベッドで静かに眠っていた。疲れてるだろうし、起こさない方がいい。本当は今すぐにでもキスしたかったけど、今日は我慢してまた明日出直そうと思った。
そっと出て行こうとしたし物音を立てたわけじゃなかったけど、晃司は気配を感じたのか目を覚ましてしまった。
「陸斗…」
「…ごめん、起こした?」
「お前の匂いがしたから」
晃司はゆっくりと起き上がった。
「この前…ごめん…。ごめんなさい」
「…」
「俺、晃司が嫌がったからわざと…もっとしてってわがまま言った…」
「…いいんだよ」
手を伸ばしたから、そこに抱かれる為にベッドに腰掛けた。晃司は僕のお腹に腕を巻き付けるようにやさしく迎えてくれた。
「…もう…終わったの?」
また明日から毎日会えるのか気になって聞いた。
「…」
晃司は途端に顔を曇らせた。…嫌な予感がする。
「この事は…まだ誰にも言っちゃいけないよ」
「…う、うん」
「…兄貴の死は…事故じゃなかった」
「…え?」
「殺されたんだ」
葬式が終わったとか、悪夢の元凶がいなくなったとか…これですべてが終わったような気がしてた。
でもこれは…『終わり』ではなく、更なる悪夢の『始まり』だった…。


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あきゅろす。
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