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監視遊戯
セット完了
俺のプランはこうだ。『県の依頼で、この地区一帯のお宅のシロアリ調査をしている』。あの少年の家は、少なくとも築10年は経過してるであろう木造二階建てだった。今時シロアリってのも無理があるが、うまくやればそれっぽく聞こえなくもないだろう。何より天井裏を見るフリをして、カメラの設置場所を十分検討出来そうな気がした。
あくまでも『調査』だ。それっぽい機材など用意する必要なはいだろう。作業服はどこででも買える。そして名刺をパソコンで偽装した。実在するシロアリ駆除業者の会社名を使い、どう見ても本物の作業員に見えるはずだ。

準備が整い、早速少年の家を訪ねる。平日の昼間、母親しかおらず好都合だった。人のよさそうな母親で、俺のデタラメ話を疑う様子もない。悪いな、これからアンタの息子をオカズにするってのに。親のアンタでさえ知らない秘密を知る事になるかもな…。
すべての部屋を見せてもらう事になり、少年の部屋以外の所はそれらしいフリをしつつ、適当に済ませた。二階に案内され、最後に通された部屋が恐らくあの子の部屋だ。男の子ならではの雰囲気を漂わせてる。
「すいませんね、息子の部屋なんで散らかってて…」
母親が脱ぎ散らかしてある服などを拾い集める。言う程散らかってるわけではないが。持参した脚立を立て、天井を何ヵ所が見る。どの角度からがいい?やはりベッドを足元の方から見れる位置にすべきか。この位置なら、勉強机に向かってる時は真横から、テレビの前に座るなら斜め前方から見る事が出来る。どんな場合でも顔を拝める方がいいに決まってる。好都合だったのは、その位置にエアコンが設置されてる事だった。当たり前だが、エアコンの設置場所をそうコロコロ変えるなどありえない。壁面に設置されてて、天井との隙間もないに等しい。この隙間にカメラを設置すれば気付かれる事もないだろう。あまりの狭さで無理もないが、埃が積もりっぱなしだ。掃除をする事もないんだろう。唯一の不安があるとすればエアコンが故障した場合くらいか。だが年式を見ると去年の型である事がわかる。そう簡単に壊れたりする事もないはずだ。
おっと、あまり長くダラダラと考えてる暇はない。母親がすぐそこにいて、俺の作業を見てる。母親に背を向けるようにして視界を遮り、怪しまれずに取り付けなければ。その時だった。
「ごめんくださ〜い」
と玄関先で声がした。
「あら、ちょっとごめんなさい」
母親は階下に向かい姿を消した。おばはんの声だったから、近所の主婦が回覧版でも持って来たんだろう。何にせよチャンスだ。誰もいない時間が1分あれば、しっかりと角度を決めて設置出来る。俺はこの隙を逃さず、慎重にカメラをエアコンと天井の隙間に挟み込んだ。念の為、瞬間接着剤でしっかり固定する。…完璧だった。脚立を降りて見ても、まず気付かれる事はないだろうと確信した。
母親はすぐに戻って来たがもう遅い。用は済ませた。
「大丈夫ですね、シロアリの心配はありません」
とバカバカしい嘘をついて家を後にする俺。母親は最後まで疑う事もなく
「ご苦労様」
と俺を見送った。…チョロイもんだ。さぁ、早速部屋に戻ってカメラの設置具合を確認しよう。

モニターをオンにした俺は、喜びで頭がおかしくなりそうだった。あの部屋の様子が完璧に映し出されていたからだ。エアコンの真下はさすがに無理だが、ほぼすべてを見れそうだ。机、ベッド、テレビの前…あの子が利用しそうな場所は問題なく監視出来る。最大ズームにしても、本棚のマンガの背表紙の文字までくっきり読める高画質。後は、主役の帰りを待つばかり、か…。


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