監視遊戯
プライバシー崩壊
例えば、街でスゲェ好みの美少年を見掛けたとして、アンタならどうする？まさか『ヤラせて』なんて声を掛けるわけないよな。大抵、ただ見送るしかないはずだ。やったとしてもせいぜい携帯で隠し撮りする程度。その写真で、少年のあんな事やこんな事を想像してマスかいたりとかさ。いいんだ、それが普通だ。
もし跡をつけ回したりしたら、立派なストーカーだ。少年にも気味悪がられ、いい事など何もない。
ペットのように少年を性のオモチャにしてるヤツもいるかも知れないが、そんな例は極めて稀だ。実際の所、少年は手の届かない存在ってわけさ。
…ショタってのはまったく厄介な性癖だ。オマケに最近はあちこちで妙な事件が続発して、子供も、その周りの大人も警戒心が強くなってる。フラストレーションは溜る一方だな。
俺かい？まぁ俺もそんなもんだ。誓ってもいい、少年に触れた事さえない。でも目をつけた少年の事なら大抵の事は知ってる。調べたわけじゃない。ストーキングしたわけでもない。…監視してるからだ。
ちなみに俺は普通の会社員だ。朝から夕方まで働くサラリーマン。趣味は特にない。少年の監視は趣味じゃなく『日課』だしな。
定時に仕事を終えて自分のマンションに戻る。風呂に入り、メシの支度を済ませてから監視室に入る。ここで過ごす事が俺の日常ってわけだ。時間にして、夕方６時から午前０時くらいまで。土日祭日は、一日中いる事もある。
引き篭りと言われても構わない。やってる事は一日中自分の部屋でギャルゲーやってるキモヲタとたいして変わらんしな。だがそれよりはるかに充実してるぜ。それにゲームより面白い。少年のプライバシーってやつはな。その少年が誰にも見せないプライバシーを見れるとしたら、引き篭りにならない自信があるか？まず無理だと断言しよう。俺も最初の頃は大変だった。モニターに釘付けになり、猿のようにマスかきに夢中になったもんだ。何せ、ヤラセなしで少年の着替えやマスかきを拝めるんだからな。
あれは去年の夏のある日の事。街で偶然見掛けた少年の美しさに俺は心を奪われた。意識してやったわけじゃなく、気付いたら跡をつけていた。
その子の家を知ったものの、だからと言ってどうこう出来るわけじゃない。期待外れ、というより、根本的に自分が何か勘違いしてる事に気付いてその場を去った。
ネットで『それ』を知ったのはその数日後だった。アメリカの軍が開発した物で、ＣＩＡやＦＢＩも実際に使用してるという超小型カメラ。長さ２センチ、幅５ミリ程度の大きさで、画質はもはや俺がイメージする『隠しカメラ』のレベルじゃない。デジタルズーム機能が付いて、目一杯拡大してもかなりの高画質らしい。何よりすごいのは、衛生を使って受信した映像を無線で飛ばせる事だった。しかも内蔵バッテリーは自家発電するとかでほぼ無限らしい。今の技術はすごいな…。これをあの少年の部屋に取り付けたら…。待て、頭を整理する必要がある。これはもう非現実的な話じゃない。どうにかしてこのカメラを仕掛ければ、彼のすべてを見る事が出来る。あまり詳しくはないが、カメラが発見されない限り、盗撮されてると気付くはずもない。何せこのサイズだからな。…モノは試しだ。ダメモトで挑戦してみよう。
しかしその値段に驚愕した。カメラ単体だけでも百万を越えてるじゃないか。レシーバーだのモデムだの、フルセットでの総額は高級外車を上回る。諦めようにも、明らかに盗撮を前提にしてるとしか思えないような、無線でカメラの角度などを変えられる装置が魅力すぎる。
だが…あまりにも高い。来年あたり、車を買い換えようと貯めていた貯金でも足りない。どうする？足りない分は銀行で借りるか？
問題はまだある。俺にはこの装置が、更に言うなら取引先が本物かどうか見抜けない。思い切って買ったものの、見事に詐欺られました、では目も当てられない。一体どうすれば…。
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