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破滅遊戯
逆襲のハッキング
15分後、僕と翔太くんはお父さんの書斎にいた。智也くんはおじさんがマンションに帰って来た時、すぐ連絡出来るように張り込みしてくれてる。もし予定より早く帰って来て、僕達がいないとわかったらこの家に直接来るかも知れないからだ。
「うわ、すっげいいパソコンだ」
ホントはこの部屋には入っちゃいけないんだけど、翔太くんは『絶対にパソコンを使った形跡は残さない』って言った。もう僕は翔太くんを100%信じてる。
「ちょっと集中すっから静かにしててね」
「う、うん」
「何かひとつでも見落としたりしくじったりしたらこっちがヤバくなる事もあるし。警戒厳重なとこに侵入するから」
すごいや…スパイ映画の中にいるみたい。モニターを見る目と高速でタイピングする指…『チンチン見せてよ』って言った子とは思えないくらい真剣そのもの。あんなスピードで打てる人ってホントにいるんだ。僕は指一本でもヘロヘロだけど。
「これ見てみな」
そう言われて見たモニターには、何だか難しそうな言葉がたくさん書かれてあった。
「詳しくは言えないけど、全国民を管理してるデータベースなんだ」
「?」
「見てな」
カタカタやると、そこに出てきたのは僕の名前だった。名前や生年月日、住所、生まれた病院まで書いてある。
「出生届が出されてる者は必ずここに登録されるんだ」
「??」
「登録されてない者は密入国者か…私生児って事になる」
「???」
そろそろわからなくなってきた。
「もちろん、あのおっさんのデータもある」
次にカタカタやると、あのおじさんと思われるデータが出た。
「この記録を消したらどうなると思う?」
「生まれてない、って事になる…?」
「そう、ここのデータを消せば届けを出した役所の記録も同時に消える。あとはクズ鉄屋の営業証明とか、交通局に侵入して免許取得の記録も消せばあのおっさんはこの世に存在してなかった事になるんだ」
そんな事がパソコン一台で出来ちゃうの?何だか怖いなぁ…。
「まぁ、おっさんを知るヤツまでは消せないから、いたっていう事実は残るけどね」
考えてみたらやっぱり怖いや…。
「片っ端からすべて消してやるよ。あんなヤツ存在しない方が世の中の為だから」
確かにそう思う。でもちょっと可哀想な気もした。人殺しとか強盗とか、もっと悪い人はたくさんいる。ケガをさせられたわけじゃないし、そこまでする必要はないんじゃ…。それを翔太くんに言ったら
「何だよ、やさしいな。裸にされて首輪付けられた時の事思い出せよ」
って返された。単純な僕はあの恥ずかしさと悔しさを思い出し、すぐにメラメラとリベンジファイヤーに燃えた。
「それだけじゃつまんないから、消える前にちょっとお小遣いもらっちゃおうと思ってさ」
えっ?まさかそれもパソコンで操作出来ちゃうの?
「まぁ見てろよ。おっさんの有り金全部と、ローンカードの暗証番号手に入れて借りれるだけ借りちゃうから。カードだけでも50万はイケると思うぜ」
「どうやってお金、手にするの?」
銀行とか行ったらカメラでわかっちゃうよね?
「ジュネーブの銀行に口座持ってるから、一旦ドルに換金してそこに振込むの。んで、頃合いを見て日本円にしてこっちの口座に振込めばオッケー」
…翔太くんってもしかしたらホントにスパイかも…。
「色んな事してきたからさ、2万ドルくらい持ってるよ」
そ、それっておいくら万円…?
「全部済ませるのに1時間くらい掛かるから遊んでていいよ」
そう言われても…。僕は翔太くんにジュースを運んだりして働いた。働くって程の事じゃないけど。そういえば智也くんはこの暑い中、外でおじさんが帰って来ないか見張ってるんだ。その智也くんにもジュースを届けに走る。彼氏である翔太くんの為だろうけど…それは僕を助ける事にもなるわけだから。
「おっ、さんきゅー」
智也くんはマンションの入口が見える道路脇でDSやってた。
「早く戻った方がいいよ。見つかったら見張ってる意味ないし」
「はい」
「翔太に終わったらメールして、ってゆっといて」
「はい」
そして帰ろうとした時…。
「あ」
「?」
「翔太とセックスしてどうだった?」
智也くんは肩を組み、ニヤニヤしながら聞いてきた。
「気持ちよかった…デス」
彼氏にこんな事言っていいのかな?
「今度、俺ともヤろーね」
智也くんは僕のお尻を軽く揉んだ。…何だか似てるなぁ…この二人…。


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