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変装遊戯
性癖
「まほちゃ〜ん♪」
僕は小さい頃からそう呼ばれてきた。真保(しんぼ)友和という名前の名字が『まほ』とも読めるからだ。そう呼ばれる理由は簡単。僕が女の子っぽいから。僕は別にオカマじゃない。ホモでもない。ただ見た目が女の子っぽいだけだ。自分でもそう思う。同級生の友達は、みんな中学生になって男っぽくなってきたのに、僕は小学生の頃のまま、背も伸びないし、声変わりもまだ。色白でいまだに女の子に間違われる。公衆トイレに入ると、先にいた人は必ずギョッとする。女の子が間違えて入ってきたと思うからだ。そして僕が男である事を確かめるように、おしっこしてる所を覗き込みちんちんを見てくる。また別の時は、クラスの友達と遊びに出掛けた先で、その子のおじさんと出くわした時の一言。
「何だ、もう彼女連れてんのか」
…もう慣れたから気にもしないけど。見た目が女の子っぽいのはどうしようもない。こんな顔に産んだお母さんが悪いんだ。姉妹はいないし、何かしら影響を受けたからでもない。仕草も普通だし、ホントに見た目だけの事なのに…僕は一度も『男らしい』とか言われた事がない。

ただ、別にそれを嫌がってるわけでもなかった。それが原因でイジメられた事もないし、中学の先輩…特に女の先輩からは黄色い声で呼ばれたりして、ちょっとしたアイドル気分にもなれる。髭やスネ毛なんか生えなくたっていいし、いっそ本当にアイドルでも目指そうか、なんてね。

そんな僕の密かな楽しみ。それは…女の子の格好をする事だ。そして隣町へ出向き、女の子として振る舞う。さっきも言ったように、僕はオカマじゃない。女の子になりたいわけでもない。ただ違う自分になって街を歩き、スリルを味わってみたいんだ。すれ違う人みんなを騙してるようでおもしろい。女子トイレに入っても、かわいい雑貨屋さんでアクセサリーなんか見てても、誰一人僕が男だと気付かない。それが楽しくて仕方なかった。親にも内緒で買った女の子の服もかなりたまった。その日の気分で着たい服をバッグに入れて出掛ける。電車で隣町に着いたら、トイレに入って着替えるんだ。最初は入る時に緊張したけど『ちょっとアナタ、男の子でしょ!?』何て言われた事は一度もない。今では緊張する事もなく平気な顔して女子トイレに入る。個室から出てくる時は、時にはワンピースだったり、時には短いスカートだったりする。それも最初は慣れなくて大変だった。脚がスースーしてどうも落ち着かない。椅子に座る時はちゃんと脚を閉じないとパンツが見えてしまうから気を遣った。何度目かにはすっかり慣れて、完璧に『女の子』に変身出来るようになっていた。

今日はただスリルの為だけじゃなく、ある目的の為に変身したんだ。せっかくここまで女の子になるわけだから、どうせなら下着も女物にしたかった。この前見つけたランジェリーショップって所で買おうと決めていたんだ。今日は短めのスカートを履いて、女の子っぽさを強調してみた。スカートの中はガラブリなんだけど。その格好でお店に入る。キラキラした雰囲気ですっごくかわいいお店。マネキンに付けられた下着は白やピンクのフリフリで、どれも履いてみたい物ばかりだった。目移りしてたら若い女の店員さんが近寄ってきた。ここまで接近されるとさすがに焦ったけど、やっぱり今日もバレなかった。
「いらっしゃい。どんなの探してるの?」
「えと…」
そう言われてもどんなのがあるかわからないし。
「あんなの」
僕が指差したのはマネキンに飾られたピンクの下着だった。
「ちょっと待ってね」
店員さんはそう言って同じ物を持ってきてくれた。
「ブラはいいかな?」
「はい」
おっぱいはどう間違っても膨らんでこないからいらないや。
「もしかしてお母さんが買ってくる下着、かわいくないとか?」
「え…まぁ…はい」
「やっぱり」
店員さんはうれしそうに笑った。


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