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恥辱遊戯
逃がさない
放課後の帰り道も秀一はいつも通りだった。途中コンビニに寄ってジャンプを買ってワンピースを見て笑ってる。僕は次第にあの忌まわしい映像を忘れていた。完全に忘れる事は出来ないだろうけど、そのうちどんな内容だったか思い出せなくなり、やがて気にならなくなっていくと思う。だから秀一とはこのまま友達でいようと思う。時々宿題見せてもらったりするしね。

秀一の家に着き、僕は中に入るのをためらった。ソフトだけ受け取って帰ろうと思った。いつか忘れるとしても昨日の今日だから、部屋に通されたらきっと動揺してしまう。
「どうしたの?」
立ち止まる僕に秀一が聞いてきた。
「え…?今日は帰ろうと思って…」
「え〜、遊んでいきなよ。あのゲームのわかんないとこ聞きたいしさ」
秀一に手を引かれ、断る事が出来ず中に入った。秀一の部屋はもちろん昨日のまま。ついビデオテープのラックを見入ってしまったけど、そこも昨日のままだった。
「あのさ、中ボスの倒し方がわかんなくてね」
秀一は制服の上着を脱ぎ、プレステの電源を入れコントローラーを手にしてからベッドに腰掛けた。僕はその隣に座る。
「こいつこいつ、何回やっても勝てないんだ」
「こいつはねぇ、一回後ろに回ってから攻撃すんの。前からの攻撃は効かないから。んで振り返ったらまた後ろ行って…その繰り返しだよ」
「な〜るほど〜」
僕が説明してもうまく出来ない秀一。意外にゲームは苦手だったりする。
「ちょっと貸して」
僕はコントローラーを受け取り、お手本を見せる。僕が秀一に勝てるのはゲームだけか、何て思いながら。
「やっぱうまいなぁ裕樹は」
誉められるとちょっとうれしい。
「で?どう思ったの?」
いきなり聞かれた。
「え?何が?」
「僕のビデオ見て」
…っ!?心臓が縮んだ気がした。指が動かない。前を見ていてもゲーム画面は目に入らない。体が震えてきた。
「ねぇ、どう思ったの?」
…バレてる。秀一は、自分の秘密を見られた事を知りながら、まるで何もなかったように振る舞っていた。
「…ご…ごめん…」
とりあえずそれしか言えなかった。
「そうじゃなくて。どう思ったかって聞いてんの」
秀一の声のトーンが下がった。明らかに怒ってる。
「どうって…その…」
ゲームオーバーになっても汗ばんだ手でコントローラーを握り続けた。
「人の秘密を勝手に見てさ、感想を聞かれたらだんまり?調子よすぎない?」
「ごめ…ごめんなさい…!」
「謝れなんて言ってねーだろ!?」
秀一は僕の胸ぐらを掴み乱暴に大声を上げた。これが…秀一…?別人みたいに怖い顔をしてる。
「どう思ったんだよ」
「…」
やはり僕は何も言えなかった。もしかしたら殴られるかも知れない。そう覚悟した。
「言ってやろうか?コイツ変態だ、って思ったんだろ!?」
激しく揺さ振られた。
「そんな事思ってない…!」
ホントは思ったけど、そう言わなきゃきっと殴られる。そう思って答えた。すると秀一は手を離し、僕の胸元を直しながらやさしく言った。
「そうだよね、裕樹はやさしいからそんな事思わないよね…。僕のビデオ観てオナニーしたくらいだから」
「!!」
それもバレてる!?
「し、してないよっ…!」
弁解しても無駄だった。
「うそつくなよ。帰ってきたら部屋ん中、精子臭かったよ?」
わざとらしく僕の肩に手を回す秀一。まるで逃がさないと言わんばかりに…。


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あきゅろす。
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