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夢訪問(夢幻の双刃サンプル)
夢訪問
〔夢訪問〕

 雨の降る日が増えたこの頃僕はこの学校で生活していくことに慣れてきた。この学校でというが僕は別に転校してきたわけではない。

 僕こと獏凪(ばくなぎ)斎(さい)は五年前に夢の世界に閉じ込められていた。
そうは言っても閉じ込められていたのは魂で体は双子の弟の亜岐(あき)に使われていた。亜岐の見たものは映像として僕は見ることが出来ていたけど見ているのと本当に体験することは違うのだと思い知らされた。閉じ込められるまでは当たり前のようにできていたことが難しいと思うだなんて。

 そして自分では受験したことがない高校に今高校二年生として生活し始めたところだ。勉強はもともと嫌いではないし、夢の中は色々な書物を沢山読んできたおかげかついていけないということはない。あえて問題があるとすれば人間関係かもしれない。

亜岐は日ごろから誰かと関わろうとすることがなかったから友達がいない。唯一夢の中にいた頃に知り合った後輩の未沙(みさ)が時々話し相手になるくらいだ。
 あの時は互いに先輩後輩とは知らずに話していたから気を使わなくてもいいとは言ったから敬語を使う事はないが僕の事を先輩というのはやめる気はないらしい。
 つまりクラスで僕は浮いているんだ。亜岐のように相手を見下す気にはなれないが話しかけられる事はなく自分から話しかけるということもできずにいる。
 だけど高校生なんてあっという間に終わる。
 僕は高校を卒業したら家業を継ぐための道を歩む。そしたら学校の事なんか関係なくなる。

 そんな僕の家業はかなり変わっている。人々の夢に入り込み、人々に悪夢を見せて気力を失くし最終的には死に至らしめる化物である無喰(むくう)を退治するんだ。ひとくくりにするとシャーマンと呼ばれているが、詳しくは浄化屋という。
昼間は母が夢占い師として情報を得て、無喰が関わってそうな事は退治する役目であり浄化屋と言われている父に通すんだ。
 それ以外にも浄化屋の事を知っていて家に訪ねてきたり連絡を取ってくる人もいる。

だけどけして有名な仕事ではなく、むしろ知っている方が珍しいくらいだから正直生業として大丈夫かと疑っていたけど意外にも依頼は多く生活に困ることがないのは救いだ。


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あきゅろす。
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