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宵々町奇譚〔学園祭編〕
学園祭編1(BL、女装ネタあり)
[宵々町奇譚 学園祭編]

 僕、狛宮(こまみや)茂(しげ)が生まれ育った場所は臥(が)龍(りゅう)市(し)宵々(よいよい)町(ちょう)だ。
 何か有名な物があるわけでも、感慨深い歴史があるわけではない。唯一知られている伝承といえば昔ここで暴れていた悪い龍と戦った旅人がいてそれは実は神様の使者の白い龍で、悪い方を倒して力尽きた龍は眠ってそこに町が出来たらしいけど、そんな架空の生き物のこと伝えられても信憑性がないよね。
 それにそういう言い伝えって各地にもわりとあるらしいから本当に特徴のない普通の街だ。
 それよりも僕の二人の幼馴染みの方が色々凄いんだ。そのうちの一人に僕は今ピンチに立たされてるところだ。
 目の前に立って僕を見つめているのは腰まである綺麗な水色の髪を首の辺りで束ねた顔立ちの整った高校二年生の男子。
 僕たちの通う神輿(みこし)高校どころか他高にまでファンクラブがある。美容に詳しくて優しくて絵に描いたような王子様って言っても過言じゃないくらいカッコいい雪乃下麗斗(ゆきのしたうると)君に僕は所謂(いわゆる)壁ドンをされている状態だ。女の子ならドキドキするようなシチュエーションだろうけど僕にとっては別の意味で心臓が落ち着かない。
「逃がしませんよ、茂。」
「ひいぃぃぃぃっごめんなさいぃぃぃぃぃぃっっ」
 散々逃げ回ってきたけどそろそろ限界かもしれない。
「文化祭で行う喫茶店でメイド役でしょう?採寸の子も困ってますからいい加減に戻りましょう。」
「いっっ嫌だっっ!女装なんてしたくないっっ!」
 たかがそれだけだと思うかもしれないけど、夏休みの宿題全免除という甘い誘惑のあるミス神輿の女装部門に出場した僕にどういうわけかファンクラブが結成されそうになって男子に散々迫られたのが落ち着いたばかりなのに冗談じゃないっ!
「そうは言ってもくじ引きでしょう?」
「おーーいっ麗斗っ茂の奴いたかぁ〜?」
「丁度いいところに来ましたねっ」


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