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鎖国


菊が何か言っているようだが、何も聞こえない。
自分の心音がうるさいくらいに、頭に響いていた。
あの時に似た、感覚――。



――力ガ、欲シイ……

頭の中で誰かの声が響く。

――モット、力ガ……

そうだ、力が――欲しい。

――鬼ノ血ヲ、呼ビ覚マセ……

鬼の――。



「…………」

『なあに?もう終わりかしら』

くすくす、と楽しげに菊は笑う。

『ああ、可哀想に……坊やが喰われてしまうわ』

もう、猶予は無かった。
菊はちらりと郁を伺うが、俯いて立ち尽くしたまま動かない。

「…………、……。……」

何か独り言をぼそぼそと呟いているようだが、聞こえない。
気味が悪い、と菊は眉を寄せた。
――その時。

『嗚呼……、獲物がいっぱいだわ……!』

聞き覚えのない女の声が、洞窟に大きく反響した。

――次の瞬間、炎が傍を横切る。

そして、郁の中で何かがぶつりと切れた。





『随分と速い……』

ふらり火より遅れ、燈永一行は洞窟に到着した。

『ったく、さすが年寄りは移動も遅いね』

『元々、私は空を翔るのに秀でてはいない』

『はっ、言い訳?』

鼻で嘲笑し背から降りる斎に、ひくりとこめかみを震わせ燈永が鋭い視線を向けた。
しかし、今はくだらない争いをしている場合ではないため、小さな狐の姿へ戻ると斎の肩へ飛び乗った。



 

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あきゅろす。
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