鎖国 4 「…………」 一行から一歩手前に出て辺りを見回していた郁が、ふと口を開いた。 「明かりだ。一つ、二つ――……」 遠くに目を凝らせば、確かにいくつかの灯火がゆらゆらと揺れていた。 暫しの沈黙の後、さあっと壱伎の顔が青ざめる。 「あ、あれ……同心(どうしん)じゃないの?」 『だろうねぇ』 あくまでも態度を崩さないのか、斎が適当な相槌を打つ。 燈永も頷くが、郁だけが何のことか分からない、といった様子で壱伎達の会話に聞き耳を立てていた。 「やばいよ、逃げないと捕まっちゃう」 「……逃げる?」 「あれ、ひょっとして分からない?……えっと、説明してる時間はないんだ!」 首を傾げる郁に、簡潔に説明する言葉が無い壱伎は慌てたように告げた。 『……まあ、異人に子供に変な狐ときたら嫌でも捕まるさ』 『……阿呆の鬼は放っておいて、さっさと退くぞ、郁』 変な、が気に障ったのか、言葉に刺々しいものを含ませ、燈永が駆け出す。 しかし、未だに状況が把握出来ずにいる郁は、立ち往生していた。 壱伎は慌てて彼を引っ張り、その場を立ち去る。急ぎ小道に入って、大通りの様子を窺う。 [*前][次#] [戻る] |