おおきく振りかぶって
逃げる
三橋君と花井君の3打席勝負。
結果は三橋君の勝ちだった。
いやそれよりも、彼の投球。
目が逸らせなかった。
動かないミット。
つまり抜群のコントロール力。
9分割のストライクゾーン。
そして彼の努力。
マウンドに対する執着。
どれもがとても魅力的だった。
「すごい(ボソ」
彼の全てがスゴイと思った。
確かに卑屈だけど、全然自信がないけど、それでも!
ああ、泣いてしまいそうだ。
***
あれから三橋君の根性をたたき直すためだかなんなんだか、三星学園との練習試合をすることが決まったようだ。
まあ私は参加しないから関係ないか。
ねーアイちゃん。
百枝「さて! 大月さんの話も聞かせてもらえるかな!?」
っていーやー!
さっさと帰っとけばよかったー!
「あー、私はただ三橋君の投球を見に来ただけなのでもう帰りますねー」
百枝「ええっ? マネジやってくれるんじゃないの!?」
「いやホント勘弁してください」
田島「なんでぇ!? 一緒に甲子園目指そうぜ!!」
「どっから湧いて出た。甲子園は応援しますけどマネジにはなりません。それに、明日あたりにマネジ入るんじゃないですか?」
百枝「マネジは一人より二人がいいと思うのよね〜」
「…とにかく、三橋君の投球見たので帰りますね」
あ、その前に三橋君に挨拶してから帰ろ。
「三橋君!」
三橋「あ、大月さ ん」
「投球凄かったよ!」
三橋「そ、なこ となぃょ。あれは、阿部君が、」
「うん。でも、私は三橋君の努力がスゴイと思ったの。ホイ手出して」
三橋君の手を握ると温かかった。
「この手を作るのに、一体どれだけ投げたんだろうって思った。三橋君の投げる球を見てみたかった。すぐに自信を持て!なんて言わない。
でもね、三橋君がした努力があることを忘れないで…。大丈夫っ、三橋君の頑張り、ちゃんと知ってるからね!」
三橋「ぁ、あり が、とう///」
「ふふっ、じゃあまた明日、ねっ?」
手を放してグラウンドの外に走った。
今思うとすっごい恥ずかしいこと言ったよね。
うん。
恥ずかしかったわ。
でもとりあえず、三橋君の投球が見れてよかった!
***
百枝「ねね! 今の子、田島君達と同じクラスなの!?」
田島「そっすよー!」
百枝「あの感じじゃ、相当クラスで目立ってるんじゃない?」
泉「本人は無自覚みたいですけどね」
百枝「なるほどね。田島君、泉君、あと三橋君も! 大月さんを野球部に入るように勧誘してちょーだい!」
田島「いっすよー!」
泉「そりゃ構いませんけど、断られてましたよね」
百枝「あの子はこの部に必要な子よ!(あの子が入ってくれれば部の雰囲気が良い意味で変わる! 三橋君の扱いも上手そうだし…)」
田島「まあいーじゃん! オレも大月と部活してーし…。三橋もしたいよな!」
三橋「ぅえ!? あ、ううううん」
泉「勧誘ね、してみるだけしてみっか」
***
ぞぞぞぞぞっ!!
「な、なんか寒気がした?」
気のせいかな?
まあいいや。
さっさと帰って晩御飯のしたくしなきゃ!
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