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おおきく振りかぶって
三橋廉という人間
帰る支度をしていると、隣の席の女の子が話しかけてきた。



愛花「ねねっ、大月さんって高校からこっちなの?」


「えっと、うん」


愛花「そっか! 私地元だからさ、何でも聞いてね!!」


「ありがと、…えっと、皆本さんだよね。皆本愛花さん」


愛花「そう! 名前までよく覚えてたね〜」


「可愛い子だなって思ったから」


愛花「っ///」



なんか顔赤くない?



「顔赤いけど大丈夫? 今日はもう部活の勧誘とかだけだろうし、帰ってゆっくり休んだ方がいいよ?」


愛花「あ、ありがとう/// えっと、また明日っ!」


「また明日、ね」



あれ、笑ったらいけなかった?
なんか俯いて出てっちゃった。



 ***

「ちょっとヤバい!」


「見た!? 今の笑顔!!」


「綺麗! 格好いい! 王子様スマイル!!」


「話してた子は羨ましいというか気の毒というか…」


「でも、やっぱり…」


「「「羨ましいぃ〜〜〜!!!」」」



なんてクラスの女子が私を見てたなんて、ちっとも気づかなかった。

 ***



さて、だいぶクラスの子が減ったな。
ってあれは…。


ポツリと1人まだ席に座ってる子がいた。



「(三橋廉、君)」



野球部のエースとなる、彼だった。

どうしようかな。
ちょっと話してみたい。
つーか投球を見たい。

でもでもっ!
あ、そっか。
行っても入部しなきゃいいんだ!
クラスの三橋君とだけ仲良くなれば、野球部に関わらなければ、大丈夫…だよね?
じゃあ早速…。



「あのっ、」


三橋「ビクリ)ぇ、ぁ、?」


「あ、いきなり話しかけてごめんね? 私、大月ユイっていうの、あなたは三橋君…だよね?」


三橋「ぅ、あああ、あの、えっと……はい」


「よかったぁ、間違ってたらどーしようかと思った!」


三橋「??」


「さっきからずっと溜息ばっかりついてたからどうしたのかと思って…。コレ部活勧誘の紙だね。見てもいい?」


三橋「どう ぞ」


「野球部かぁ。三橋君、野球部に入るの?」


三橋「ビクゥ)ぁぅ、ぇ、ぃゃ、」


「ゆっくりでいーよ」


三橋「(いい人っ)オ、オレ、野球、やっちゃ、ダメ、だから」


「へ? どーして?」


三橋「ダメピ、だから」



白々しいなって自分でも思うけど、ここで過去を知ってますなんて言ったらややこしくなる。



「私、聞いてもいい話かな?」


三橋「え?」


「どうしてダメピなのか、教えてほしいな」


三橋「で も、つまらなっ」


「つまらなくなんてないよ。三橋君が話してもいいってゆんなら、話聞きたいな」



どうだろ。
話して、くれるかな?



三橋「……オレ、中学でも、野球やって て、」


「うん」


三橋「そこの、学校が、ジィちゃんの学校で…その、エ、ス、を」


「おじいさんが理事してるんだね。埼玉の学校?」


三橋「うう ん。群馬。三星、って 学校で」


「群馬の三星、そこでエースをやってたの? 三橋君って投手なんだ」


三橋「っ、でも、ダメピで、エースも、ヒイキでっ」


「なるほど。監督が理事長の孫だからってエースにさせちゃったんだ?」


三橋「オレ、よりっ、いい投手 なんて、いっぱい、いたのに、オレ、マウンドッ 譲らなっ、くて」


「うん」


三橋「球も、遅いし、試合だって、全部 負けて、オレの、せいでっ」


「辛いこと、話してくれてありがとう」


三橋「オレ も、ごめっ、こ、な…話」


「ううん。私が話してって言ったんだもん。私の方こそ、ごめんね?」


三橋「(大月さん、いい人 だ、な)」


「三橋君はさ、投げるの…好き?」


三橋「? 投げ…?」


「うん。マウンド譲らなかったのはさ、投げたいから、投げるのが好きだから?」


三橋「ぅん、オレ、投げるの、好き」


「そっか、じゃあさ、やっぱり部活、見に行った方がいいよ」


三橋「ぅえ!?」


「うーんと、あ、三橋君、手出して!」



戸惑った様子だけど手を出してくれた。
その手をそっと握る。



三橋「/// あああああのっ!?」


「(冷たい手)…うん。やっぱり三橋君は野球部に行った方がいいよ」


三橋「ど、して?」


「私、こんな努力してる手を見たことないよ?」



そう、三橋君の手はタコだらけだった。
野球をやらないからどれがどれなんてわからないけど、色んな種類のタコがある、努力した手。
ずっと、1人で投げ続けてたんだ。



「投げるの、好きなんでしょ?」


三橋「…好 き」


「じゃあ、行こ?」


三橋「で、も、」


「1人じゃ無理なら、私と行かない?」


三橋「え?」


「私は、三橋君の投球が見てみたい」


三橋「オレ、あの…」


「大丈夫。あなたの努力を認めてくれる人、絶対にいるから」



だから、行こう?

三橋君は、頷いた。

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