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おおきく振りかぶって
入学
あれから随分と頭の中を整理して、なんとか落ち着いた。

この世界の私の両親は死んでた。
交通事故だったそうだ。
他の兄妹は健在で、私の世界の人達と変わらず仕事をしてた。

私が中学2年の時に両親が事故にあい、それからは覇気のない生活を送っていた。
高校は両親も知人もいない県外に行きたいという私の我儘を、母方の伯父が聞き入れてくれた。
そして西浦高校に入学したというわけ…。

これらの情報が、あれから突如頭の中に流れ込んできた。
今までの生活、中学までの記憶が鮮明に流れ込んでくるのはとても気持ちが悪かった。
まるで記憶の上塗りをされたみたいで、気分が悪い。
それでも、元の世界の記憶もしっかり持っていた。

そして今日、私は西浦高校に入学した。



 ***

「ここが、西浦高校」



受験に来た記憶はあっても、“私”が来るのは初めてだ。



「んーと、9組か」



私の所属するクラスは9組。
早速クラスに…と思ったが足を止める。

今の、今年の入学生は“いつ”なんだろう。

私がここに――おお振りの世界にきた原因は分からない。
ただ、もしかしたらとは思ってる。

彼らと過ごしたい。
彼らと青春を送ってみたい。
彼らと…、甲子園に行きたい。

そう思ったのも間違いではない。
でも、だからといってそれがトリップする原因になり得るのかは分からない。



「たしかめてみますか」



今年、彼らが入学するのか。
それとも彼らは違う学年で、もう卒業したのか。
はたまたまだ入学してないのか。

わからない。
何もかもわからないけど、でも、確かめたい。

そう決意して、私は自分のクラスに足を進めた。



 ***

クラスでは席が自由だったため、私は一番後ろに座った。
その方が観察しやすいし。
でも観察する暇もなく、入学式のために体育館に向かった。

まあ式自体はあっという間で、すぐ教室に戻ってきた。

担任の提案で自己紹介が始まって、そしてようやく、それがわかった。



田島「田島悠一郎でーす! 野球部に入ります!!」



ああ、やっぱり彼らの世代か。
他にも泉君に、三橋君、あとは…応援団になる浜田君。

そして私の番が回ってきた。



「大月ユイです。岡山から引っ越してきました。部活は…特に入る予定はないですね。よろしくお願いします」



とりあえずこんなもんかな?
部活は、まあ…。
野球部って考えたけどやめた。
どんな形で原作を変えるかわからないしね。
つーかみんな見過ぎじゃない?
そんな私の自己紹介変だった?



担任「以上だな。とりあえず1年間、仲良くやっていこう!」



担任の挨拶で今日は終わり。
結構あっさりしてるんだ。

2回目の高校生活、楽しんでみよーかね。

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