おおきく振りかぶって トリップ 平凡な人生を歩んできた。 別に秀でたものもなく、ただ少し、今の生活は納得してなくて…。 でもそれもあと2年もすれば終わると思ってた。 そう、この時までは…。 *** 夏休み。 私は家でゴロゴロと、たまにバイトに行きながら、味気ない生活を送ってた。 折角だからと、前に買った漫画を読み返していた。 夏といえば野球。 野球といえば甲子園。 そんな方程式が成り立って、衝動的に読んでいた。 しかし夜遅くまで読み漁っていた所為か、眠気が酷かった。 漫画の中の子達を見て、青春っていいなーなんて思いつつパラパラとページを捲る。 「ふあーあ。そろそろ寝ようかな?」 パタリと閉じて電気を消した。 「いーなぁ青春。私も、あの子らと一緒だったら、何か変わったのかな」 そんな可能性はあるはずもない。 馬鹿らしく思って目を閉じる。 でも、でももしも、もう一度青春をやりなおせるとしたら…。 *** 朝目覚めた私は、全く知らない部屋にいた。 どこだよここ。 昨日自分の部屋で寝たよね私。 なーんて思ってキョロキョロと部屋を見渡す。 よっこいせと立ち上がり、本当に若干ではあるけれど視界が低いことに気づいた。 急いで洗面所に向かう。 そこで目にした自分……鏡にうつった自分は、少し幼い私だった。 「なんか、高校の時みたいな…」 髪も短くて、耳にピアス穴がない。 そして更に、戸惑う私の目に飛び込んできたのはカレンダー。 3月。 今8月じゃないの? あ、でも暑くないし…。 あれ? 意味が分からなくなった。 と同時に怖くなった。 「何が、起こってるの?」 わけがわからない頭をなんとか働かせようとする。 でも無理で…。 というか何で洗面所の場所がわかったの? この家が、自分に馴染のものじゃないはずなのに昔からずっといたように思える。 ふらりと居間に行くと、テーブルの上に書類が置いてあった。 “西浦高校入学手続き” あ、なんか色々爆発した。 [次へ#] [戻る] |