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忍たま2
空を見上げる
ふらりと、立ち上がる。

「ユイさん?」

「…しは、」

声が、うまく出ない。

「どこへ…」

「私は、」

 イラナイ


そう一言発するだけで精一杯だった。


シナさんが何か言ってた気がする。
でも聞こえなかった。

何も聞きたくない。
何も考えたくない。


シナさんは追いかけては来なかった。
たぶん、私が一人になりたいと思っていると考えたんだろう。




気がつくと、山の中に一人。
日は傾き始め、空は薄っすら色付いている。

風が、私の頬を撫でる。
髪を束ねていたゴムをとると、長い髪がさらりと流れた。
空を見上げた。

涙は出ない。
だって、たくさん泣いたから。
きっと枯れてしまった。

「あーあ、つまんないなぁ」

感情なく呟く。


木の下にでも座ろうと足を踏み出すとぴりっと痛んだ。
見ると裸足。
どうやらここまでずっとこの状態で歩いてきたらしい。
血が滲んでる。
さっきまで痛くなかったのに、急に鈍い痛みを感じだした。

痛みを無視して足を踏み出す。
そして木の下に座り込んだ。


ここは学園からどの程度離れたところかな?
けっこう歩いた気がするけど……ああダメだ。
もういいじゃないか。
学園を出た私を探す人なんていない。
だって私はイラナイんだから。

でも、お礼くらい、言って出ればよかった。
食事も寝る所も、仕事だってもらったのに…。

「これから、どうしよっかなぁ」

ボーっと空を見上げ考える。


このままここで山賊にでも見つかって身売りされるか。
それとも、熊とか猪とか獣に襲われるか。

何にしたって生きてはいけないんだろう。
元々あるはずのない命。
ここで朽ち果てたとしても悔いはない。



…いや、一つだけある。

七松小平太、だっけ?
上級生で唯一私に構ってきた奴。

何度かマラソンに誘われたんだ。
見せたいところがあるとか何とか…。

一回くらい、了承しても良かったな。

あんなに何度も見せたいといってた場所。
どんなところだったんだろう?
まあ、もう見れないだろうけど。


空の色が、だいぶ赤くなってきた。

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あきゅろす。
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