忍たま
気遣い
訳の分からないまま授業が進み、しかし自分で言うのもなんだが、元来真面目な性格だった私はいつの間にか真剣に土井先生の話を聞いていた。
そしてあっという間に授業が終わった事に驚いた。
土井「今日の授業はここまで!」
え、ウソ、もう終わりですか?
目を白黒させていると、土井先生が近づいてきた。
土井「授業、退屈じゃありませんでしたか?」
「いえそんな! 先生の授業は素人の私にはよく分からない事ばかりでしたけど、話が聞き取りやすくて楽しかったです!」
そう素直に感想を言うと、
土井「…っ!!」
土井先生は泣き出してしまった。
って、ええ!? 何なに!?
これ私の責任っていうか、私の所為ですか!!?
「あ、あの…」
土井「私の授業、聞きやすかったですか?」
「へ? え、ええ」
土井「よかった」
いや、涙浮かべるほど嬉しかったんですか?
そんなに普段辛い事があるんですか?
とりあえず、何ですね、土井先生は…、
「お疲れ様です」
苦労人って事ですね。
土井「ぐすっありがとうございます」
頑張って土井先生。
私は先生の事応援してますよ!
「ってそうじゃないです」
土井「ぐずっ、はい?」
いつまで泣いてんですか?
いい加減泣き止んでくださいよ。
私が泣かしたみたい…じゃなくて!
「何で私を授業に誘ったんですか?」
これが疑問だった。
何? 自分の監視下にいないと不安ですか?
他の先生方じゃあてにならないですか?
土井「深い意味はないんです。ただ、大月さん、ここに来てからゆっくりする暇もなく事務の仕事して…。
落ち着ける場所だってないだろうし、あるとしたらこの子達の側だろうって思ってですね」
ああ、この人は私が落ち着ける場所を提供しようとしてくれたのか…。
それが同情からなのかもしれないけど、どうでもよかった。
「土井先生」
土井「え、あっはい!」
「お気遣いくださり、ありがとうございます!」
土井「…いえ。気分転換できたなら、よかったです」
確かに、は組の子達と一緒にいるのは楽しかった。
土井先生の気遣いには感謝してもしたりない。
もう一度彼に頭を下げ、先程から「ユイさーん!」と私を呼ぶ子供達の下に向かった。
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