めぐりめぐって 出会いは灰空の下で 「し、死ぬ……歩きすぎたぁ……」 ガクガクと震える膝に手をつき深呼吸する。 自業自得とはいえ、まさかここまでキツいとは思ってもいなかった。 これからは弁えて家の周辺をウロウロする程度にしよう、なんてつまらない事を考える。 最近、家から一歩も出なくなったせいでかなり太った。 それはもう無惨に。お腹辺りにぶよぶよとした脂肪が溜まりに溜まってしまい、体重も5kg近く増えてしまった。 流石にデブになるのは嫌だったが、どうしても外へ出られずにいた。 そのせいで贅肉は増えていく一方。我ながら無様である。 10kg増えたんじゃないかと思った時、ついに私は立ち上がった。 着痩せするタイプだとはいえこれ以上は隠しきれないだろうとわかっていたから。というかそれなら学校行けって話だけど。 とはいえ、ずっと家に引きこもっていたのだ。突然運動しても、体力が持つわけがなかった。 今度からは何歩歩くか、決めてから行こうか。くそ、馬鹿なことをした。 予想以上に大きい数字になった万歩計を睨みつつ、胸中に手小さく愚痴った。 新しい道路ができていたからと、好奇心に任せて道を進むと壮観な自然の景色が開けて、さらに気になって進んでしまった。 そんなことの繰り返しをしているうちに、足がガクガクして目眩がするほどになっていた。 へばりつく服に嫌悪感を抱き、早くシャワーが浴びたい、と心から願った。 脇の下だけでなく、全身がべったりとしていて気持ち悪い。 鉛のように重たい体に鞭を打ち、ジャージのポケットから鍵を取り出す。 いつもなら愛嬌があって気に入っているライオンのキーホルダーも、今は無様な私を嘲笑っているようでウザったいだけだった。 疲労で小刻みに震える手。中々上手く鍵穴に入らないので苛ついてしまう。 元から不器用な方なのに、これ以上下手になっても困るんだけど、ああもう、イライラする。 数回差し込む行為を繰り返し、漸く扉を開けることが出来た。 大きく溜め息を吐いてから取っ手に手をかけた。 これでまた、いつものような一日になるのだろう。そう思っていた。 ご飯の時とお風呂の時だけ部屋から出て、たまに家を訪ねてくれる学校の教師たちに登校拒否して謝って、パソコンでアニメ見たりして遊んで、たまに勉強して、両親に小言を言われて。 そんなゴミみたいな生活を繰り返してくんだと、漫然と思っていた。 けれど、そうはなってくれなかった。 どさり。 「ありゃ?」 家の中に入り、もう少しで扉を閉めると言うところでなにか重たいものが落ちてくる音が聞こえた。 一瞬猫か何かかとも思ったが、猫にしては重たすぎる音だった。 第一、猫は落ちても着地できるらしいし違うだろう。 では何だろう、と思考を張り巡らせてみるが思い当たるものがない。それに、実際に目にする方が早い。 又もや好奇心に身を任せ、扉を勢い良く開けた。 そこには、私の思考レベルでは到底想像できないモノが落ちていた。 「……なんだよ、これ」 何処かで見たことのある、黒地に紅い雲の描かれたマントを着た人が倒れ伏していたのだ。 [*前へ][次へ#] |