時と闇の継承者
9
連れてこられたのは、木造の平屋だった。周りをまるで木々に守られているような場所に建っていた。
狭いところだけどと、前置きしながら扉を開ける『彼』に招かれて中に入る。
すると、家の中に入った瞬間に元気な声に迎えられた。
「お帰りなさい、マスター!」
「ただいま」
声の主に、にこやかな笑顔で返す『彼』に続いて、中に入った例の乱入者に、出迎えてくれた奴は一瞬で顔色を蒼くした。
「げっ、リュート様!?」
『その人』の後ろから相手を窺うと、俺と同じかちょっと上ぐらいの年の黒髪の男が驚愕した顔をしていた。
「ほぉ、なかなか気のきいた挨拶だな、アロフ?」
「ななななんでここにっ!?」
明らかに動揺している相手に、『その人』はとても楽しそうな笑顔を見せた。
それは、俺が最初に向けられた、あの底知れない笑みに似ている気がした。
「何故とは愚問だな、アロフ」
『その人』は両手を腰に当てるとフフンと得意そうに言い放った。
「俺が居たいからだ!」
そいつは一瞬微妙な顔をしたが、『その人』は気にした様子もなく、どうだ参ったかという顔をしていた。
(たしかにイタイ感じの人だよな)
ちなみに『その人』の台詞は俺の脳内で違う意味に変換された。
「いや、そういう意味じゃな……いや、そうなのか?なんか違うような……」
なぜか悩み始めたそいつを、俺は心の中でアホ認定させていただいた。
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