時と闇の継承者
8
―Side コハク―
「心配しなくても今だけだ」
そう言って笑う支幻(シゲン)殿に、首を傾げているトキヤの姿を見て、僕は苦笑した。
「その言い方だと、余計不安になりますよ」
僕の言葉にトキヤが大きく頷いた。
本当に、素直な子だ。
少し意地悪をしたくなるほどに純粋で。
だからこそ、この世界で生きるには危険すぎる。
何も知らせないために異世界に送られたトキヤ。
『いつか、その時がくれば、時夜はこの世界に来ます』
銀の王の言葉が脳裏に浮かぶ。
かの王の言葉通りだとするならば、今回はその時なのだろう。
ならば、僕のすべきことは、トキヤに自分の知っていることを教えることだ。
僕は未だクロと抱き合ったままのトキヤに笑顔を向けた。
「もうちょっと行けば、僕の家があるから、詳しいことはうちに着いたら説明するね」
そして、ついでのように付け足しておいてあげる。
「離れたくないのもわかるけど、そのままだと歩きにくいんじゃないかな?」
「っ!!!!!!!!!?」
予想はしていたけれど、あまりに瞬間的にクロから離れたトキヤに、僕は笑いをこらえるのが大変だった。
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