[携帯モード] [URL送信]

時と闇の継承者
2


「ご機嫌ね、時夜さん」

ばあ様お手製の白菜の漬物に箸を伸ばしていた俺は、え?とばあ様を見た。

お茶を入れているばあ様は、にこやかな笑顔だ。

「鼻歌。最近いつも歌ってるから」

俺の視線を受け、ばあ様は湯呑みを俺の前に置きながら理由を言う。

ばあ様の言葉に、俺はあぁ、と呟いた。

「また、歌ってたんだ……」

どうも最近無意識に口ずさんでいるようだ。

「何の歌なの?聞いたことのない曲だけど」

ばあ様の問いかけに俺は緩く首を振る。

「どっかで聴いた気がするけど、よくわからないんだ」

俺の曖昧な返事にも、ばあ様は柔らかな微笑みのまま「そう」とだけ呟いた。
そして客用の湯呑みにお茶を注ぎ、それをトレイに乗せてダイニングを出て行こうとするので、食事を再開していた俺は首を傾げながら尋ねた。

「誰か来てんの?」

するとばあ様はええと頷いた。

「大将(ヒロマサ)さんが」

ばあ様の口から出た名前に、俺は眉を寄せた。

「あいつ、寮生じゃなかった?」

「昨夜は外泊届けを出して実家に泊まったそうよ」

ばあ様の言葉にふーんと呟く。

「なんでも、時夜さんに用事があるとか」

何気なく告げられた言葉に、俺はまた眉を寄せた。

「俺に?」

「時夜さんの食事が終わるまで道場で待っていますって」

ばあ様はそれだけ告げると、リビングを出ていった。





.

[*前へ][次へ#]

2/33ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!