時と闇の継承者
2
「ご機嫌ね、時夜さん」
ばあ様お手製の白菜の漬物に箸を伸ばしていた俺は、え?とばあ様を見た。
お茶を入れているばあ様は、にこやかな笑顔だ。
「鼻歌。最近いつも歌ってるから」
俺の視線を受け、ばあ様は湯呑みを俺の前に置きながら理由を言う。
ばあ様の言葉に、俺はあぁ、と呟いた。
「また、歌ってたんだ……」
どうも最近無意識に口ずさんでいるようだ。
「何の歌なの?聞いたことのない曲だけど」
ばあ様の問いかけに俺は緩く首を振る。
「どっかで聴いた気がするけど、よくわからないんだ」
俺の曖昧な返事にも、ばあ様は柔らかな微笑みのまま「そう」とだけ呟いた。
そして客用の湯呑みにお茶を注ぎ、それをトレイに乗せてダイニングを出て行こうとするので、食事を再開していた俺は首を傾げながら尋ねた。
「誰か来てんの?」
するとばあ様はええと頷いた。
「大将(ヒロマサ)さんが」
ばあ様の口から出た名前に、俺は眉を寄せた。
「あいつ、寮生じゃなかった?」
「昨夜は外泊届けを出して実家に泊まったそうよ」
ばあ様の言葉にふーんと呟く。
「なんでも、時夜さんに用事があるとか」
何気なく告げられた言葉に、俺はまた眉を寄せた。
「俺に?」
「時夜さんの食事が終わるまで道場で待っていますって」
ばあ様はそれだけ告げると、リビングを出ていった。
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