時と闇の継承者
20
目覚めると、時計の針は11時を回っていた。
「…………」
二時限目前には登校する予定だったのに、熟睡してしまっていた自分にへこんだ。
しばらく黄昏る俺を、ヒロマサは問答無用とばかりにどこかへと連れ出した。
ホントに一言も発することなく、強引に引きずられてきた俺は、わけがわからないままだ。
声をかけようにも不機嫌そうなヒロマサに無言の圧力をかけられ、黙って付いていくしかない。
まだ授業中なのだろう、連行されている間は他の生徒に見咎められることはなかった。
辿り着いたのは天宮学園の学生食堂らしきとこだった。
サボりの生徒なのか、食堂には数名の利用者の姿があった。
食堂で堂々とサボってて大丈夫なのだろうか?ちょっと心配してしまうが、考えてみればヒロマサもサボりになるわけだよな。
こいつも大丈夫なのか?
適当な場所に座らされた俺は、そっとヒロマサを盗み見る。
ヒロマサは特に気にした様子もなく、さっさと料理カウンターへと行ってしまった。
え?なに?放置?放置なのか?いやそれよりも俺、メニュー言ってない……。
それとも自分だけ食うつもりなのか?
そんなことを考えていると、ヒロマサが料理の乗ったトレイを持って帰ってきた。
ドンっと音をたてて俺の前に温かい湯気の昇るうどんが置かれる。
「あの……ヒロマサ、くん?」
無言で俺の前の席に座るヒロマサに、恐る恐る声をかけてみる。
「病人はおとなしく食べる」
「……はい」
いやいや。俺、病人じゃないから……とか、なんでうどん?……とか、うどん、好きだけど……とか、俺、思いっきり部外者だけど、いいの?……とか、なんか怒ってんの?……とか、いろいろ思ったが、とりあえずヒロマサの言う通り、おとなしくうどんを食する事にする。
「……………」
沈黙が重い。
耐えられなくなって顔をあげると、ヒロマサと目が合った。
「……なに?」
「なにが?」
何か言いたそうな目をしていたから聞いてみると、逆に問い返されてしまう。
「なんか言いたい事がありそうだったから」
「あぁ。あるな」
「ふぇ?」
あっさり肯定されるとは思ってなかった俺は、間抜けな声を出してしまった。ちょっと恥ずかしい……。
「食ったら送ってくから」
ヒロマサはそれだけ言うと、もう話す気はないのか、黙ってしまった。
俺はさっぱりわからないまま、食べるのを再開するしかなかった。
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