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時と闇の継承者
14



気がついたら目の前にヒロマサの顔があった。
しかもやたらと近い。

もう少しで唇が触れそうな距離に、思わずヒロマサの顔を押しやる。

「……何をしている?」

「いや、ちょっと人工呼吸を」

半眼で尋ねると、ヒロマサは顔を押されたまま真面目な顔で答えた。

「溺れたわけじゃないのにするなっ」

人工呼吸されるような状態ではなかったはずだ。

俺のツッコミに、ヒロマサはちょっと考える素振りをした後、「そういえばそうだな」と頷いた。

頼むからもっと早く気付いてくれ。

俺の心のツッコミに吹き出す者がいた。

そちらへ顔を向けると、高村先輩が口元を押さえ、肩を震わせる姿があった。

え?俺の心の声が聞こえたのか?
いや。それより居たのかよ。

「………」

元凶の姿に半眼を向けると、高村先輩は俺の視線に気付いた。が、笑うのは止めなかった。
…まあいい。高村先輩はこの際後回しだ。

「……とりあえず」

今だに俺の上にいるヒロマサに向き直る。

「お前はさっさとどけ」

俺に馬乗り状態のヒロマサを軽く睨みながら訴える。

「気分はどうだ?」

俺の訴えをヒロマサくんは無視しやがりました。

「どうもこうも。お前がどいたらすっきり解決だ」

嫌味を込めて言ってやったにもかかわらず、ヒロマサはそれをスルーした。
……この野郎。
さすがに温厚な俺でも我慢の限界はあるんだぞ?

「ヒロマ……サ?」

人の話を聴かないヒロマサを怒鳴りつけてやろうと名前を呼んだ瞬間、ヒロマサは俺の頬に片手を添えた。

「顔色がまだ悪いな」

心配そうに呟くヒロマサ。

「……え?」

そこでようやくヒロマサの様子に気付いた。瞳に深い後悔と不安の入り交ざった色を浮かべて、本気で俺を心配している。

そんな目をしていた。




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