時と闇の継承者
11
―Side アロフ―
古びたその建物を見た瞬間に、オレは違和感を感じた。
若に視線を向けると、幼なじみとジャレあっていて気付いていないようだ。
(ま、力のほとんどを封じられてるから無理もないか)
そのおかげで若に気付かれずに護衛ができるし、若自身の身の安全も多少確保できる。
一石二鳥だ。
(と、今は関係ないか)
意識を目の前の建物に戻す。
それと同時にセンパイが引き戸を開けた。
(っ!)
引き戸を開けた瞬間に溢れ出る負の気配に、オレは総毛立った。
闇の精霊にも匹敵するんじゃないかと思う程の負のエネルギーに、オレの中で警鐘が鳴る。
多少でも力を持っている者ならば、引きずられてしまうだろうその影響力に、慌てて若を見る。
そこには、顔色をなくし、苦しそうに顔をしかめる若がいた。
中途半端に感応しかかっている若に、オレは思わず叫んでいた。
「ダメだ、若っ!」
オレの言葉に反応した若は、意識をなくすことでそれ以上の感応を防いだ。たぶん無意識の行動だろう。
それでも、若をもっていかれなかった事に安堵した。
若が自己防衛本能によって窮地を脱したのを見届け、意外に冷静な幼なじみに若を任せ、オレは引き戸を振り返った。
こんな危ない物はさっさと塞いだほうがいい。
オレは腕を持ち上げると、引き戸に向かって手のひらを突き出した。
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