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時と闇の継承者
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「で?ここはどこだ?」

暴走俺様男、進藤から逃れた俺とヒロマサは、洋館風の建物の前で立ちどまっていた。

立派な建造物を見上げながら訊ねると、ヒロマサは簡潔な返答をしてくれた。

「うちの寮だよ」

「寮?これが?」

随分贅沢な寮だ。……て、他の寮と呼ばれる建物を見たことがないから、俺のイメージと比較してになるけど。

「昔の校舎をリフォームしたらしいよ」

「へー」

リフォームだろうがリサイクルだろうがどうでもいい。

たかだか一高校生にこんな場所で一人暮らし……じゃなかった、寮暮らしさせているとは贅沢だと思っただけだ。……内部は見てないけど。

「藤枝じゃないか」

しげしげと建物を眺めていた俺は、第三者の声に顔をそちらに向けた。

「高村先輩」

寮の正門から出てきた背の高い男に向かってヒロマサは頭を下げる。

「おはようございます」

目上に対しては、ホントに律儀だよな、ヒロマサは。

「おはよう。……なんだ」

高村先輩とやらはちらりと俺に視線を寄越してきたので、ヒロマサのために礼儀として頭を下げる。

「朝から彼女連れか」

……ん?今、何か空耳が――。

「彼女と同伴登校とは、藤枝もなかなかやるな」

「誰が彼女だ」

とんでもない誤解に思わず声が出ちまったじゃないか。

しかし敵は俺の反論をスルーした。

ヒロマサに半眼を向けると、奴はただ苦笑しているだけだった。

……おい、コラ。ちゃんと反論しろ。

「先輩。こいつが以前話した時夜ですよ」

否定どころか、話題を替えやがりました。

「へぇ。これが」

「初対面の奴にこれ呼ばわりとは何様だ」

あまりな言い様についツッコミを入れてしまう。

「俺は高村隼(タカムラハヤト)だ。なんなら高村様と呼んでくれて構わないぞ」

「誰が呼ぶかっ。それに、名前をきいたわけじゃ……」

「さて、行くか」

「無視するなっ」

高村先輩とやらは俺のツッコミをスルーすると、さっさと歩きだした。

人の話を聞かないとはけしからん奴だと憤慨しながらふと隣を見ると、ヒロマサが肩を震わせていた。

「……お前も笑ってないでなんか言えっ」


薄情な幼なじみの耳を引っ張りながら叫んでやった。





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