精霊王たちの恋 母の日だし……後日談 「――ということがあったんです」 「へぇ。よかったな」 時夜からのプレゼントが嬉しかった私は、手近な司空に自慢していた。 なのに、司空ときたら大して興味なさそうな反応しか示さない。 「……やはり子どもというのはいいですね」 「そうだな。その花が普通のカーネーションじゃなければヤバかっただろうがな」 「……貴方は時々意味の分からない会話をしますね」 むしろ会話をする気がないのだろうか? 「あ?俺は親切心で助言してるだけだ」 「ますます分かりません」 だいたい司空から親切心だなんて単語が出てくるとは、驚愕ものだ。 「だから、カーネーションの赤は『あなたを熱愛します』って意味だろ」 「いえ、もらったのは白色ですが……意味ってなんのです?」 「なに?白だと?じゃ、あれだ『私の愛は生きています』だっけか?花言葉」 「花……言葉、ですか……」 ようやく司空の言おうとしていることに合点がいく。 けれど同時に、司空の口から『花言葉』などというなんとも不似合いな単語が発せられたことに言葉を失った。 「よかったな、時夜はお前のことを親だと思ってるみたいだぞ」 そうですか、それはよかった。と何事もなかったように返すべきか。それとも貴方が花言葉を知っているなんて、とツッコミを入れるべきなのか。 「それにしても、子どもに振り回される闇の王ってのも面白いな」 対応を考えているうちに、司空から話題を変えてきた。 はぐらかされた気分になったが、話を合わせた。 「……羨ましいなら、貴方も子どもをつくればどうです」 と、見せかけて微妙に話題を変えてみる。 司空はどんな反応を示すだろうか? 「ガキならもういる」 「宮陽さんとの間にですか?」 「は?なんでそこで宮陽が出てくるんだ」 宮陽さんが可哀想になってきた。 「……いえ。ただ、貴方と宮陽さんの子ならどんな子かと思っただけです」 「さあなぁ」 もう少し動揺するかと思いきや、司空は一言で終わらせた。 「わかりました。会話をする気がないんですね」 「あ?」 これ以上話をしても無駄だと悟った私は、司空に背を向けた。 後ろで司空が何かを言っているようだったが、私は聞こえないふりを通すのだった。 END [*前へ] [戻る] |