精霊王たちの恋 デートの行方C 支幻の後ろにいたのは、黒目黒髪の優男風の男だった。 困惑顔で俺たちを見ている男の腕を、支幻は引っ張り前に出させると笑顔で言った。 「清春だ!」 「………」 あまりに言葉が少なすぎて、俺たちの間に気まずい沈黙が流れる。その空気を作った張本人である支幻だけは相変わらず誇らしげな笑顔のままだ。 最初に口を開いたのは以外にも支幻に腕を掴まれたままの優男だった。 「えっと……須藤清春です。よろしくお願いします」 丁寧に頭をさげる清春青年に、反応したのは宮陽だった。 「清春さんですか。私は宮陽と申します」 律儀に頭までさげる宮陽に、清春青年も慌てて「よろしくお願いします」と頭をさげた。 「初めまして。私は克時と申します。ちなみに彼は神夜といいます」 清春青年は克時たちにも丁寧に頭をさげる。 「あー……俺は司空という」 とりあえず俺も清春青年に挨拶をする。 礼儀正しい清春青年は俺にも丁寧に挨拶をした。 「で、あんたは何でここにいるんだ?」 俺は清春青年から支幻へと顔を向け、気になっていたことを聞いた。 「何故?そんなことは決まっている」 支幻は胸を張って答える。 「デートをしていたんだ!」 「あぁ、そう……」 あまりに誇らしげに言うので、俺は脱力気味に応じた。 もうどうでもいい。とにかくこの場所を去ろう。 そう決めた俺は、さっさと宮陽を伴い踵を返した。 「じゃ、俺たちは帰るから」 「あ、司空……」 宮陽は克時たちに「失礼します」と律儀に挨拶すると、歩きだした俺の後を慌てて追いかけてくる。 「やれやれ……とんだデートになったな」 追い付いた宮陽が隣に並んだのを確認した俺は、ため息混じりに言った。 「でも、とても楽しかったです。また行きましょうね、司空」 優しい笑顔で宮陽は俺を見上げる。 「……そうだな」 宮陽の笑顔に、俺は否定の言葉が言えるはずもなく頷いた。 END [*前へ][次へ#] [戻る] |