精霊王たちの恋 デートの行方A 「克時……」 俺は半眼で幼なじみ(腐れ縁なだけだ)の名前を呟いた。 「お前、どっから湧いて出た」 「人をウジ虫のように言わないでくれませんか?」 いつもの笑顔に不機嫌オーラを背負った克時が、静かに抗議する。 「克時を虫けら呼ばわりするな」 克時の隣から怒りに満ちた低い声が発せられた。 こちらも見なくてもわかった。いつも克時の傍にいる黒髪黒目で黒ずくめの男、神夜サンだ。 「はいはい、スミマセン」 俺は相手にするのが面倒だったので、軽く流すことにする。 「で?なんでここにいる?」 もう一度質問すると、克時はあっさり説明してくれた。 「私たちが歩いていたら、後から二人が来たんですよ」 「克時さんたちもデートですか?」 宮陽のにこやかな笑顔での質問に、克時が素直に答えるわけないと思っていた俺だったが…… 「も、ということは、お二人もですか」 以外にも答える克時に少なからず驚いた俺は、克時の言葉を反芻してから気付いた。 「はい、そうなんです」 自分たちがデートをしているという事実を認めてしまったことに!しかも、宮陽は天然で正直者なので、おもいっきり肯定してしまっている。 「そうですか。それは奇遇ですね」 克時の奴がこっちをチラリと見ていつもの笑顔を深くした。 俺の背中を冷や汗が流れた。 終わった……。 しばらくこのネタで弄られる……。 俺が絶望に打ち拉がれていると、今の俺とは対照的な明るい声が上がった。 「太陽の君に銀の君ではないか!」 [*前へ][次へ#] [戻る] |