TENDER
どんなときでも、笑顔。
俺の大切な大切な、可愛いこ達を、全力で守って、健やかに、穏やかに、育てて、そんで。
ぜんぶ終わったら、きみに会いに行こうと、思ってたんだ。
でもね。多分、それはまだまだ先になる。
(ごめんな。もう少し、待ってて)
TENDER
スコールが風邪ひいた。
ここ最近急激に寒くなったし、そういえばいつもにましてぼんやりしていた気がする。
顔が真っ赤になってるのに気がついて、慌てて熱をはかったら見事に37度五分。
(最低だ俺死ね!)
息荒い。小さな体全体がじっとり汗をかいていて、目もとろんとしていて。
なんできづかなかったんだ。
震える手でオヤジに電話して、クラウドを預けた。そんでそのままチャイルドシートにスコールを乗せて病院へ直行。
クラウド、黙ってたけどめちゃくちゃ不安そうだった。
スコールは待合室の今でも、ぼんやりと俺の膝に座っている。
病院って、病気もらいやすいんだっけ。子供を連れていくならマスクが必要だった。
馬鹿な俺は当然みたくそんなの持ってなくて。
出来るだけぎゅっと抱きしめるけど、隙間から悪いものがスコールにおそいかかろうとしてる気がしてしょうがなかった。
泣いてしまいそうだ。ごめん、ごめんな。こんな父さん、最低だ。
しっとりと湿った髪に唇を押し当てて、泣くのを我慢する。
子供の甘い汗の匂いがした。
風邪ですね。と言われて、いくつか薬をもらった。
ゆっくりしていれば大丈夫だって。
本気で泣きそうになった。
出来るだけぎゅっとスコールをだきしめながら家に帰ったら、気をきかせたのかオヤジはクラウドを連れて出かけたらしく、置き手紙がしてあった。
とりあえずスコールを寝かせて、ストーブだと乾燥するからエアコンをつける。お湯も沸かしたから当分は乾燥はしないだろうし、あとは、あとは。
何かしていないと気が狂いそうだ。
「…うん、だから今日はクラウド頼むな?うん、ごめん」
『ティーダ、はじめてじゃあるまいし、子供ってのは病気するもんだぜ?何凹んでんだ馬鹿』
「はは、うん」
オヤジは豪快だ。
俺はそれで育った筈なのに、なんでこんなにうまくいかないんだろう。
(あいたいなー)
もう全部あきらめてしまいたい。しんどい。こわい。
だいすきなのに、もうこの子がこわいんだ。
俺がひとつ間違えるだけでこのやわらかな体が壊れてしまう。
(もう……、)
あきらめて、しまおうか。
「とおさん」
頭を抱えてた俺に向かって、いつの間に起きたのかスコールが手を伸ばしてくる。
静かなこの子の、だっこの仕草。
俺、抱き上げる資格ない。
真っ赤な顔、俺のせいなのに。
咳して、苦しそうで、それでも、まっすぐに俺を見つめて。
俺でいいの?
ほんとはうらんでる?
「とおさん、」
「なあ、おとうさんの事、好き?」
「…?、うん。いちばんすき。クラウドよりもおじいちゃんよりもすきだよ」
「…うん」
「ほんとだよ。うそじゃないよ」
抱き上げてやれない俺に、スコールのおっきな瞳がみるみるうちに緩んでくる。ふちにたまった涙がやわらかな頬を転がりおちるまで、一瞬だった。
その涙を、見たら。
「っとおさん、とおさん!」
「ごめん、スコール、ごめん!」
馬鹿だ。俺馬鹿だ!
だってこのこのおとうさんは俺だけなんだ。俺が抱いてやらないで誰が抱くんだよ。
なあ、。
抱き上げて頬を寄せた体はやっぱり熱くて俺は今度こそ泣いてしまった。
いきてるんだ。
おれの大切な命が、いきてる。
俺を、必要としてる。
「お、おと、さんは、ずっと、いるよね?」
「あ、たりまえだろ?いるよ。ずっといるよ。ずっとずっとさんにんでいような?」
「も、おねつださないから、どこもいかないで!」
「っばか…おとうさんは、スコールがおねつでたって、ずっといるにきまってるだろ?いいんだよ。おとうさん、おねつでたスコールだって大好きだからな!」
そう言って涙でふやけたほっぺたにキスをすると、ようやく安心したんだろう。
スコールは笑ってくれた。
その笑顔が。
「だいすきだよ」
(きみに、似ていて)
だから俺はきみには失礼だけど、それに満足しちゃって。
(あいたい、でもね)
それはきっと、ずっと後の話だ。
俺の大切な大切な、可愛いこ達を、全力で守って、健やかに、穏やかに、育てて、そんで。
そのこ達が、恋をして。
生涯を通して守りたい人をみつけて、結婚して。子供を授かって、俺はおじいちゃんになって。
立派な大人になったふたりに、
おとうさん、おつかれさま。
って言ってもらってそれから。
(きみにあうのは、それから)
予定は大幅に遅れてしまったけれど、きっときみは笑ってくれるだろう?
「おとうさんもスコールがだいすきだよ」
ぜんぶぜんぶおわったら、あいにいくよ。それまでどうか、どうか。
(きみが、俺を待っていてくれたら、いいな)
/TENDER
だいすきなひとの為に書いたものでした。
前後
無料HPエムペ!