2人よがり
X'mas小説です^ω^
白眼です。
「Merry X'mas」
朝,寝起きのぬくぬくとした肌を寄り添わせてグラハムの唇にキスを落とせば
「…何がMerryなんだ」
と一瞬固まったあと,不機嫌そうな声が返ってきた。
もう少し微睡んでいたい意識を,眠りの中から引きずり出された不快感のせいだけではないように思える声。
「何だろうね。一般的に言えばイエスの生誕かな??」
平々凡々な答えだけど,多分そうだから仕方ない。
「君はクリスチャンなのか」
「無神論者のつもりだよ」
たまにグラハムは意地の悪いことを言う。
この次に言うことは知れている。
クリスチャンでなければ何故キリストの誕生を態々祝うのか,尋ねるに相違ない。
「ならば何故祝う??」
ほら,きた。
寝癖のついた癖っ毛を引っ張ってやりながら,碧とも蒼とも言えるような勝ち気なガラス玉の瞳の端を舐めた。
「カタギリ!!その癖,やめろと何度言えばわかる!!」
「フラッグファイターの目は大切だもんね。知ってるよ」
でも,好きなんだよ,こうするの。
と,わざと耳元で囁いている。
ここが弱いって,女の子みたいだと思う。
腕の中でジタバタ暴れるのを押さえつければ,昨夜の疲れが残っているのかすぐに大人しくなる白い肢体。
「白眼を舐めるのはやめろ」
げんなりした声でそう言って,薄い筋肉の付いた腕で目を庇うように覆う。
はぁ,と息をつく喉を甘噛みしてやると喉仏が上下してきゅぅと彼のお腹が鳴った。
「お腹減ったの??」
「君が昨日の夜食べさせてくれなかった」
久し振りの休暇を愛しい恋人と過ごせる嬉しさを,子供のような表現方法で衝動的にベッドへグラハムごとダイブしたのが約12時間前。
三十路もこえた男のすることではないが,たまにはハメを外したっていいはずだ。
体がギシギシと痛むのは無視するとして。
「ごめん,何食べたい??」
「チキン,それとケーキ。あとスパークリングワイン」
「…祝わないんじゃなかったの??」
明らかなクリスマスメニューを頼んだので凄く驚いて聞き返してしまった。
「誰も祝わないなど言っていない。昨日の君への細やかな怒りを含ませて,意地の悪いことを言ったまでだ。それに私はイベントは楽しむ主義だと知っているだろう??」
少し頬を赤らめているのが可愛くて(成人男性にこういう形容をしていいのか気が引けるが)潰れるくらい抱き締めると,不満そうに彼は唸る。
昨日の夜は君だって結局楽しんでたくせに,という言葉は彼の神経を逆撫でするので飲み込んでおいた。
「すぐ用意致しますよ」
漸く解放してやると,逆に彼の両腕が伸びてきた。
吃驚する暇さえ与えてはくれなくて,
唐突に仕掛けられる,
溜めに溜めた精液よりもずっと濃厚なキス。
「Merry X'mas,ビリー」
咄嗟の囁きで顔が熱くなっていないか,外気で冷えた手の甲で確める。
確める迄もなく,血流がおかしいのは分かってはいるが…。
急にそういうことを言うのは,
「反則」
してやったりと笑うグラハムは,僕の下からするりと抜け出してバスルームに熱いシャワーを浴びに行った。
間抜けな顔をしているであろう僕を,1人広いシーツと毛布の海に残して。
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