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目を瞑りました












「見境ないんだから、もう」



大人しくされるがままに目を瞑ってお化粧をしてもらう。服飾系の学校最大のイベント、ファッションショーのために。



「ふみ、聞いてるの?」

「聞いてるよー」



ようやく睫毛に白い羽を付け終わったのか、巨大なポーチをがちゃがちゃ言わせながらかなこは説教を続けた。



「あのね、見境なく何人も女の子をたぶらかすから昨日みたいになるの。分かる?」

「うん、わかる」



たぶん昨日帰り道に愛人2号が私と愛人1号の愛の逢瀬を目撃して刃物を持ち出したことを言ってるんだろう、と推測して首を縦に振った。



「1人にしなさい、浮気せずに」



そう言いながらかなこは私の頭をがっちりホールドして唇に取りかかった。
かなこがその1人になってくれるなら、私は他の誰の愛も必要ないのに。
浮気なんて悲しいこと、しなくて済むのに。
刷毛が唇を往復するのをうっとりと感じながら、心の中で目の前の大好きな人に愚痴を吐く。
本当に鈍いって残酷。
真っ赤なリップが出来上がったのを目の前の大きな鏡で確認する。

回りには変身しちゃった女の子がたくさん。
色んな衣装に個性的なメイク、ヘアスタイルだって様々。
でも皆お人形さんみたいに可愛い顔と柔らかなおっぱい、細い腰に丸いお尻。
壊れそうなくらいちっちゃな指で、カモシカみたいな足に絡み付くタイツを直す。
私も同じ女の子。



「素敵」



鏡越しに化粧っ気のないかなこが誉めてくれた。
あなたの方が素敵よ、とは言えないで、代わりに「キスして」と言った。
変なとこで恥ずかしがっちゃう私。



「女の子達に殺されたくないから嫌」



ふざけて笑いながら最終調整を始めた。



ああ、皆と別れたらキスしてくれるのかなぁ…

目を瞑って思った。














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