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格差のお話












内側から沸き上がる感情を悟られたくない。



キスされるのは苦手。
唇が合わさって、舌が入ってくる。



「んー」



手を突っ張って抵抗とも呼べない抵抗を緩く、鈍く、試みる。

彼の味がする。
僕の舌の下を彼の肉厚な舌がザラリと撫で上げる。
味わわれている、そう感じると逃げたくなる、怖い。
一方でそう感じると、感じる。



「可愛いなあ、なんでそんなに可愛いんだおまえ」

「知らん。てゆうか、あんたの美的感覚て、よう分からん」

「そうなん?おまえがMAXレベルで基準点なんじゃね?」

「あんた、目にフィルター付いとるだろ」



皮肉っぽいことを言うと、またキスをされる。
唾液が交換される。
返せ、僕の唾液。
吸うな、ばかやろう。

丁寧な動きで僕の中をなぜる。
歯列の縁を通って上顎を擦って舌を絡めて下顎に溜まった液体で遊ぶ。
最後に唇を音がするように放す。

もうだめだ、だめ。

内側から沸き上がる感情を悟られたくない。

感情だけじゃなくて、快感とか感覚も。



「何時に帰ってくる?」



堪らず尋ねた。



「できるだけ早く。遅くとも8時には」

「それじゃ遅い」

「たぶん7時には電車乗れるから、ね?」



子供にするみたいにして頭を撫でる。
子供扱いすんな、もう来年20になるんだけん、
って言うのはあんまり子供っぽすぎると思い直して、視線を落とした。
年の差あると、辛い。
彼の大人の余裕?
そんな違いが怖い。

内側から沸き上がる、不安とか、苦しくなるくらい好きな気持ちとか、悟られたくない。
恥ずかしい。
悲しい。
あしらわれてるんじゃないけど、簡単に欲情させられたり、置いてきぼりにされたり。
髪の毛を愛情込めてかき回されると心はぐちゃぐちゃになる。
色んな感情や感覚を制御できない。
屈んでキスされる前に爪先立ちしたくなる。
反抗期。



死ぬまでこの追いかけっこは終わらないんだろうな、
ため息が出そうになる。



「じゃ、行ってくる。レポート頑張っとけよ」

「言われんちゃやる。行ってらっしゃい」



ちょっと自分って、中学生みたいに色々な混乱があって思い悩んでると思う。
中二病とか言われちゃったらそれまでだけど、それでも大事なことだと思う。
こうやって考えるのがどんなにアホくさいことでも、人生ってやつの基盤になるわけで。
だからこういう気持ちやもやもやは心の宝箱にしまっておくに限る。
捨てるでもなく、忘れるでもなく。
まして無理に解決しようとするでもなく。



まぁこれも彼の受け売りなんだが。



なんとなく結論付けて、玄関のとこでスーツの肩に手をかけてキスを贈れば、お返しのキスにまた腰が粉砕しそうになった。

手を降って鍵をかけたあと、



「オナニーでもするか」



と伸びをした。













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