姫初のお話
今日はここ、日本では栗を食べる日らしい。
あとお酒に菊の花を浮かべてどうとかこうとか…
そういうのが風流と言うのだろうか。
だけどぼくたちが今やってることは、世界共通で風流とは言わないことは確かだ。
大体どうしてぼくが好き好んで男なんかに抱かれなきゃいけないのか全く分からないが、流されてここまで来た以上、引き返せないというか、気持ちの問題でなく、体の問題なのだ。
兎も角ぼくの上には、情欲にぎらついた男の目があり、男のそれはぼくの中にぴったりと収まっていた。
断っておくが、ただ体を重ねているのではない。
ちゃんとした手順は踏んだつもりだ。
ちゃんとした、というのは世に言う付き合うだとかそういったことで…
つまりは合意の上で交際し、今に至るわけだが…
つまりぼくはこの男が好きなわけで…、冒頭の体の問題であるというのは、完全に否定される。
気持ちの問題。
よってやりたいのでやっているということになるのだろう。
「また余計なこと考えてるだろう」
「余計とは心外だ」
「状況わかってんのか?」
「血が出ている」
「そうだ」
ぼくの、こいつ曰く“蕾”は裂けて、流血している。
言うまでもなくこいつのあれが非常識な質量を持つからで、当然のごとくぼくは裂傷をうけたのだ。
そして今ぼくに提示されている選択肢は2つ。
一、すぐさまぼくの中からこいつを追い出し、手当てにかかる。
一、取り敢えず続けて、憐れなこいつの愚息を解放してやる。
「3秒で決めなかったら、2つ目の選択肢を無条件行使」
と言い放たれた。
全く勝手な奴だが、3秒以内に選択しないメリットはいくつかあるが今はそれどころじゃないので割愛する。
最大のメリットは、自分から求めずとも勝手に快感を与えてくれる点だ。
「あぁッ!」
突然の痛みにぼくの喉はひきつれた。
3秒とはあっという間だ。
がくがくと揺さぶられながら前が芯をもちはじめる。
痛みの中から快感を拾えるぼくはマゾヒストなのかもしれない。
彼の荒い息が聴覚を犯す。
そして馬鹿なことを囁かれた。
「おまえ、コレ今年初めて?」
「だったら?」
女相手なんてやってられないし、かといって忙しすぎて相手してくれる男探すのもだるかったからね。
「俺も、おまえでしか勃たなかったから」
自嘲気味にそんなことを言う彼が滑稽で、同時に愛しくもなった。
ぼくでぬいてる彼なんて、笑える。
「おまえ今笑ったな?」
笑い声が漏れていたのか、彼に唇を噛まれた。
それだけで気をやりそうで、驚いて下腹部に力を入れてやりすごす。
あぁつまり、秋がもう始まっているのに、今年初めてな僕たちは姫初めをしてるってわけか。
だんだん薄れていく思考の中、漸くそれだけを思って目を閉じた。
ラストスパートをかける、愛しい男の腕の中で。
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