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天使の悪戯












一言にピンチと言っても色々ある。



上官の女をとったのがばれたとか、演習成績が悪すぎて僻地にとばされるとか。



悪ければいつの間にかガンダムに背後をとられた、なんていう類いのピンチもあるだろう。





それはそうと、今まさに僕はピンチだ。





「カタギリ、力を抜け」



「むむむむりだよ!」





情けないな、とため息をついて僕のナカから指を引っこ抜いてティッシュを引き寄せた。



僕の上にはグラハム・エーカー上級大尉殿。



きめ細やかな白皙の肌に、天使のようなハニーブロンド。



人並みの表現で申し訳ないが、あのエメラルドを嵌め込んだような大きくて真ん丸な瞳の形容を他には知らない。



いつも僕に抱かれるときに見せる潤んだ目の誉め方を、誰か教えてくれないか?





…そんな彼は仮にもユニオンの上級大尉だ。



技術屋の僕とは明らかな腕力の差がある。



だから今まで僕が抱いていたことの方が不思議に思えるくらいに、組みしかれるのは至極当然なことだ。





「ってグラハム!まだ諦めてないのかい!?」



「君にもこっちの悦さを分かってもらおうと思ってな」





さも得意気にふふん、と見下ろしてくれて軍人特有の武骨な指は、再び痛む排泄器官に捩じ込まれた。





「うー…」





唸るしかない。



一応配慮してかローションをたっぷり使ってあるようだ、がしかし!



そんなことは問題じゃない!





「悦いところはどこだ?」



「熱心に前立腺を探してくれるのはいいけど、後ろで感じれる人ってそういないよ!」





僕の叫びに上級大尉殿は動きを止めた。



あれ…何かまずいことでも言ってしまったのか…?



僕の方が焦っているのは何故だろう…?。



見れば今にも「くぅーん」と鳴きそうなくらい悄気かえった蜂蜜色の子犬。



俯くと金に光る睫毛が一層長く見えて、その間から透明の雫が溢れ落ちないかひやひやしてしまう。





「ご、ごめんグラハム…でも…」





彼は肩を落としたまま今度こそ指をちゃんと抜いて、大人しく僕の上から降りた。



まだ変な感じは残ってるけれど、漸く異物感が消えた。





「私こそ悪かった」



「いいよ、謝ることじゃない」





僕が悪いことをしたみたいな気持ちになりそうで慰めれば、…





「いや、本当にすまない。君だって辛いだろう…アナルがだめだなんて、インポテンツと同等に辛いだろうな…」



「え」





ちょちょちょちょっと待ってくれグラハム!



なんかずれてるんだけど!



てゆうか僕、憐れまれてる!





「今日はもう寝るといい。大丈夫だ、君には…」





と言って僕の息子を優しく撫でた。





「君にはコレがある…」





あわわわわ…



もう返す言葉がないよ。





「じゃあ、私は頭を冷やしてくる。お休みカタギリ」





そう言って立ち上がりかけたグラハムの手首を咄嗟に掴んだ僕は、頭をフル回転させて意地悪を思い付いた。





「悪いと思ってるならすることがあるだろう?」





はっとなって一生懸命考える、僕の可愛い恋人。



あー可愛い!



可愛いのがいけないんだ!



僕のを撫でたからいけないんだ!



とかなんとか言い訳をしながら、感情込めて要求を突き付けた。





「とっても残念なことに、後ろじゃ君を感じることができない。…だから」





「皆まで言うな」





ギシ、とスプリングを鳴らしてベッドに横たわると僕を引き寄せた。





「今日は君の好きにしていい」





耳まで真っ赤にして男前な彼は呟いた。



白皙の肌が仄かに色づき、シーツに散るハニーブロンド。



完全に伏せた目蓋は微かに震え、外界からの刺激を待っている。



目眩くエロスの天使…。



思わぬ形勢逆転に心の中でガッツポーズをして、逸る気持ちと愚息を抑えながら出来るだけ優しく丁寧に目尻に口付けを施した。











諸君。

諦めるな。

どんなピンチでもチャンスに変わる。





…じゃあ、

諸君の健闘を祈って

いただきます。













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