[携帯モード] [URL送信]
オロカな男とオロカな女 1



つまらないなと思う。こんな時。
ふと真顔に戻ってしまう瞬間。
だけど敢えて顔に出すような愚は犯さない。
(そこは年の功ってヤツよねえ)
お愛想を浮かべて口に運ぶ酒。
「おいしっ!」
なんてはしゃいで見せたところで、味なんて実は良くわからない。
だって『つまらない』ことに気付いてしまったから。
…ああもう、これじゃあきっと今夜はダメね。
恋愛ゴッコに興じる気力も元気もない。
傍らに居るのは見目もなかなか、家柄だって申し分ない、今のあたしのコイビトたる男であるのだけれど。
正直ちっとも心は弾まない。
ときめくようなこともない。
(だってあのひとじゃないんだもの)
全部吹っ切って諦めて、忘れる為にと適当に選んだ男。
ちょうど都合が良かったから。
寂しさを埋め合わすのにちょうどいいタイミングで希われた。
だからその手を取ったまでのこと。
悪趣味なことをしている自覚は無論あったのだけど、やっぱり『きっかけ』は必要だしね。
それにどうせ相手の方も遊びでしょ。
(だって貴族サマだしねー)
こんな流魂街出身の女なんぞを相手に、本気であるとか到底考えられない。
その証拠に、ちょーっと身辺探ってみたら、やっぱりちゃあんといたんだもの。
婚約している、同じ上級貴族のいいひとが。
だから年貢を納める日までの、ちょっとした火遊びみたいなものなんでしょ。
若しくは、いずれ愛妾として囲われるかのどっちかでしょ。
(まあ、そんなのまっぴら御免なんですけども)
だからあのひとを吹っ切るまでの、ちょっとした身代わりになってくれそうな男だったら、別に誰でも良かったのだ。
…今は、まだ。
本気の恋愛はちょっと出来そうにもないし、精神的にもキツイから。
そもそもこんな今のあたしを本気で好きになって貰っても、到底気持ちに応えられないし、むしろ申し訳ないなとも思ったから。
軽い気持ちで忘れさせてくれそうな男だったら、よっぽど生理的に受け付けないとかじゃなければどうでもいいやと思って、投げやり半分その手を取った。
(ま、ちーっとも吹っ切れそうにないんですけども!)
楽しい振りをする。
愛される喜びを得る。
そうして少しずつ自信を取り戻していって、また新たな恋が出来たらいいなあ、なんて思っていたんだけれど。
時折こうしてフッと我に返っては、余計凹んでいるのだから、あほよねあたしも。
(うん。バカだ)
いっそ寝たら何かが変わるのかしら?と思って誘いに応じてみたはいいけれど、余計虚しくなっただけとか、ほんととんでもおバカちゃんだ。
あーでも、こないだのアレですっかり『俺の女』扱いなのはさすがにマズッたわー。
今夜もそれとなく誘って来てるのはわかるんだけど、こうも気持ちが醒めてしまった今、さすがにそんな気にはなれない。
(てゆーかむしろ、もうカンベン?)
こんなんだったらもうちょっと、だらだら引き摺ってる方がまだマシかしら?
どうせあのひと、すぐに女を作るってこともないだろうから、いっそ気の済むまで引き摺って、吹っ切れるのを自然に待つのも悪くないかも・なんて思い始めていたりもするのだ。
(うん、そうよね。その方がよっぽど建設的かもね)
それに、その気もないのに身を委ねるとかやっぱ無理だし。虚しいだけだし。
あの一回でほとほと懲りたわーと思い知らされてしまったのだった。
だからこんな男とは縁切って、さっさと隊舎にもーどろって思ったところで瞠った瞳。
(え、嘘おっ!?)









[*前へ][次へ#]

12/16ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!