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3.


もっと周りのひとのことも気に掛けて欲しい。
あなたを想う人間は、あたしを含めてこんなにもたくさん居るのだから。
そんな思いで足掻いた筈が、気付けばあたしのことを気に掛けて欲しい。
あたしのことを見て欲しい。
気付いて欲しい。
その手をあたしへと向けて差し伸べて欲しい。
そんなどうしようもない思いに駆られていた。
要は『女』としてあのひとを、欲するようになっていた。
木乃伊取りが木乃伊になったのだ。
(バッカみたい)

不毛も不毛。
前途多難もいいとこだ。
わかっていたのに望んでしまった。
一縷の希望を抱いてしまった。
無謀にも愛を乞うたあたしが、余りに浅はかだったのだ。
だからあたしにあのひとを責めるつもりは毛頭ない。
だってあのひとは最初に言ったもの。
――ごめんな、って。
あたしを愛してなどいない。
そんな対象と見たこともない。
そもそも他の誰をも望んじゃいない。
いらないのだと言われてすらいる。
(だから絶望なんてする資格もない)
今更過ぎて、乾いた笑いすら浮かんできそう。
だってそれでもいいからと、縋ったのはあたしなのだ。
せめて『あたし』と云う女を知っていて欲しい。
ぬくもりだけでも、と。
乞うて。
縋って。
希って。
尚も躊躇うあのひとの弱みに付け込んだ。
少なくともあのひとは、あたしを泣かせることを良しとしなかったから…。

「知らねえぞ」
「構いませんよ」

気持ちがないことは承知の上。
そもそも望まれてすらいなかった。
それでも…と。
必死になって乞うたあたしを受け留めてくれた、あのひとは何も悪くない。











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あきゅろす。
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