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4.


開き直ってべえと舌を突き出せば、ふっと相好を崩して舌先に噛み付く。
絡め取るようにくちづけられる。
極上のメイプルなんかより、うんと甘いくちづけに酔う。
「あー、やっぱお前さっさと仕事辞めて、俺んとこ来い」
懲りずに尚も同棲を仄めかすコドモは本当に、怜悧で聡明な見かけと頭の良さに反してあたしに甘い。
溺愛が過ぎているから笑ってしまう。
(こーんな七つも年上の女なのにね)
ついと絆されて頷いてしまいそうにもなるのだけれど。
「…あと、半年。まだ契約が残ってますもん」
だから後もうちょっとだけ、待っていて欲しい。
嘘を吐いたり、吐かれたり。
時にとんでもないデマを書き立てられることもあるけれど。
決して見た目通りの華やかなだけの世界でもないのだけれど。
(だいたい半年前のあの記事だって、嘘八百もいいとこだしね)
ホテルで密会?
お泊まり愛?
ッハ!
間違っちゃいないけど、あたしが密会してお泊まりしたのは勿論このひとだ。
因みに噂になったお相手とは、このひとのお父様――いずれ義理の父となる、日番谷のおじさまである。
あの場にはちゃんとこのひとだって居たと云うのに、見た目の幼さだけでどうやら部外者と見做されてしまった模様。
(ほんっっと適当なことばっか書いてくれちゃって、もう!)
それでも今ここで…この世界で仕事を貰っている以上、中途半端に放り出すことはしたくないから。
全部片付けて。終わらせて。
それからあなたの元に行きたいなって思うから。
「冬まであともうちょっとだけ、待ってて下さい」
んふふと笑ってくちびるを寄せる。
それに、しょうがねえなあと吐き出す息。
「ま、本をただせば俺がガキだから待たせちまってるわけだしな」
「えー、別にそこは気にしてないですよー?」
「だあほ、俺が気にしてんだよ」
くだらんデマばっか書かれてんじゃねえ、って。
あれれ?
もしかしなくとも見られてる?
知られてましたかね、遠く離れた海の向こうの週刊誌のあれやそれ。
ほんとこのひと、どれだけあたしのことが好きなのよ、もう。
嬉しくって頬を緩めれば、笑ってんな!ってお小言をくれる。
「まあ、どれもガセなのは知ってるからな」
「ですよねー」
何しろあたしの身も心も、婚約を結んだあの日からずっと、あなたひとりのものなので。
こう見えて、派手な見た目に反して一途なので。
あなた以外の誰のぬくもりも、熱も知らない女なので。
と云うか、知るつもりもないわけで。
だからこのひとがそんなゴシップを真に受けることは決してない。
何を書かれようとも、あたしも然してダメージを受けることはないのだけれど。

「けど、面白くねえのは事実だから」
「あい」

ごめんなさい、と。
ありがとう、と。
告げて、もう一度。
抱き寄せられる腕の中。
乞われるままに、くちづけを交わす。
絡めた指先。
半年前のあの日に受け取った、左手薬指に光る指輪の束縛を、今改めて嬉しいと思う。






end.


そんなわけで、私にしてはとっても珍しいタイプのパラレルなんぞを書いてみた次第。
結婚するまで暇だし花嫁修業とか向いてないけど英語も話せないから日番谷にくっ付いてく自信もないしで、大学時代に読モデビューしてそのまんま…みたいな軽いノリの設定があったりなかったりw


お題:alkalism様

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あきゅろす。
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