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君を見るたび一目惚れ 1(乱菊サイド)


「ね、あたしの部屋寄ってかない?」
さり気なさを装いつつも、懲りずに今日も日番谷を誘う。
だけど相対する日番谷は、ちょっと眉間の皴を深くして、
「お前んち、うちと方向逆だろ。めんどくせえから今日はいいわ」
今日も今日とてあっさりと、お断りの文句を口にする。
一瞬の躊躇もない辺り、実に素気無い。清々しい。
とは云え、そんなところも好きなんだけど。
でも、多分だけど、日番谷の方は然程あたしに興味がない…と思うのだ。
(だって一度だってあたしのお誘いに応じてくれたこととかなかったしねー)
そりゃ、付き合ってはくれたけど。
好きだと打ち明けたあたしの言葉に、多少驚きはしたものの、――いやむしろだいぶ驚いていたみたいなんだけど。
どっちかって云うと困惑気味で、どう見ても迷惑そうにも思えたんだけど、そこは見ない振り。見てない振りで、ガンガンに押した。
付き合って!って、泣き落としに懇願した結果、わかった…わかったから泣き止め、と。
仕方なく応じてくれただけなのだから。
とは云え、言質は頂きました。
ゆえにあたしは日番谷の彼女で間違いない。
その座を譲る気も、明け渡す気も毛頭ない。
正しくカノジョの特権を行使して、デートにおしゃべりに勤しんでいるわけですが。
(手、出されたことってないのよねー)
一応彼女となって、早三ヶ月。
なのに、ちゅーのひとつもしたことがないとはこれ如何に?
そもそもそう云う雰囲気すらも皆無なのだ。
(あれ、おかしいなあ?)
男子ってこんなだっけ?
たまに立ち止まって、ふとおもう。
もっとガツガツしてなかったっけ?
だって日番谷と付き合う前の元カレとかさ、付き合ってそっこーちゅーしてきたのよ。
しかもべろちゅーだ。
(ま、さすがにアレは引いたけど)
ドン引いたけど、他の元カレもみんなそんなもんだった。
だからそう云うもんなのかな?って思ってたんだけど、一向に日番谷があたしに手を出す素振りはない。





*
*


「大事にされてるだけじゃないですか?」
友人でもある七緒は呆れたようにそう言ったけど、そーゆーもんなの?よくわかんない。
よくわからないと答えたあたしに七緒は、少しだけ困ったように微笑むと、
「乱菊さんは見た目で誤解を受けやすい方ですから」
と、まるで小さな子どもをあやすように、そっとあたしの頭を撫でたのだった。
「私も…初めは少し誤解をしてましたから。すみません」
謝る七緒の言いたいことは、何となくだけど想像がつく。









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あきゅろす。
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