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うわさのダーリン 1


え…。
あれ?
何で??
どうしてここに!?



「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
ギャルソンエプロン姿でにっこり営業スマイルを浮かべる銀髪イケメンの店員を前に、あたしがカチコーンと固まったのは言うまでもない。
(いやいや、てゆーか何してんのよキミ!?)
だって今目の前にいるのってば、とーしろーくんだ。
何かやたらと愛想いいんだけど。
軽く髪をオールバックに整えちゃったりしてるから、一瞬他人の空似かと見間違いそうにもなったんだけど。
こんなあたし好みの顔した銀髪イケメン、そうそう他にいるわけがない。
だから、「え…」って固まった。
ぽかんと大口開けた間抜け面を、図らずも晒してしまった次第。
「ちょっと、あんた。どしたのよ」
固まるあたしに、訝るように同僚が肘で小突いてきたのにハッと我に返る。
そんなあたしの一挙手一投足に、くつりと忍び笑いを漏らす銀髪イケメン。
こちらへどうぞ、と。
仕切り直しとばかりに、慣れた仕種で以って席へと誘導されるのに、戸惑いながらも足を踏み出す。
…え?
待って、ほんとに何でここに居んの!?
時は既に春休み。
日中暇だし金も欲しいし、春休みの間、昼は親戚んちでバイトする予定だとは確かに彼は言っていた。
なんでも街で小さなイタリアンのお店をやっているとのことなので。
へー、親戚のひともお店やってんのねえ、なんて。
その時は笑って聞き流していたんだけど、――ちょっと待って。
(まさか、ここ!?)
え。
うそ。
聞いてないしっ!
てゆーか、ここってば会社のすぐ傍!
あたし、割と来てるし、ここ!
しかもとーしろーくんてば、長期休みはいつもそこでバイトしてるって言ってなかった?!
え。
それじゃもしかして、会ったこと…ある?
いやいや、まさかね。
そんなバカなと頭をぐるぐるさせながら、案内された席に着く。
去り際、あたしにだけ聞こえるように、そっと耳打ちされた砕けた調子の「いらっしゃい」のひと言に、すっかり意識は持っていかれてしまっている。
けれど対するとーしろーくんにまったく驚いた素振りも見られないことから、やっぱり彼の方ではあたしがここに来ることを見越していたものと思われた。
(うわあああもう!知ってたんなら、先言ってよう!)









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あきゅろす。
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